配当増加にも効果あり
企業部門の貯蓄余剰を減らすもうひとつの方法は、株主への配当など財産所得への支払いを増やすことだ。法人税の軽減策としては、設備投資を刺激するという趣旨からも投資減税が好まれる。しかし、企業部門に滞留している資金を動かすという観点からは、配当に対する法人税の軽減のように、企業の配当増加を促すものでも良いはずだ。
配当の増加は賃金の引き上げに比べて金持ち優遇だという批判がある。しかし、国民は皆、公的年金や企業年金を通じて間接的には株式を保有しており、財産所得の増加は国民全体に恩恵が及ぶ。株価の上昇を歓迎するなら配当の増加でも大差はないだろう。
企業の余剰資金を家計に還流させてしまうことには、企業の成長力を低下させるという抵抗もある。しかし、成長が期待できる投資機会がないから企業は資金を抱えたまま投資を行わない。であれば、とりあえず家計に還流させて経済活動を活発にすることに意味がある。家計の所得を増やして消費者がより多くの消費をできるようにすることが経済成長の目的なのだから、賃金の引き上げや家計の財産所得の増加を犠牲にしてまでGDPを拡大させる意味はないだろう。
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