ダイムラートラックにみる自動運転の最新進化 自動化レベル2を標準装備した実力とは?

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自動化レベル2の要となる車線逸脱抑制機能(60~90㎞/hで作動)と車線中央維持機能(発進後90㎞/hまで作動)は非常に精度が高かった。車線の把握には車体中央の車内側に装着された光学式単眼カメラを使う。これで車線幅3.2~4.4mの道路を走行中に限り、約80m先の道路形状を把握して、はみ出さないように電動モーターによりステアリングの操舵支援を行う。

スーパーグレートはパネルバンのいわゆる大型トラックだが、アクトロスとカスケディアの2モデルはトレーラーを牽引しているトラクターだ。大型トラックとトレーラーを牽引するトラクターでは、トレーラーの長さや重量配分などが影響するため、直進安定性に違いがあり、さらにカーブでのステアリング操作にも違いがある。

その点、今回の自動化レベル2技術は、直線、カーブ含めて極めて自然な動きをしてくれる。ただし、乗用車の車線中央維持機能のように、ガチッとしたステアリング操作支援が介入するのではなく、あくまでもドライバーの運転操作を支援するような制御に終始する。ここが乗用車との大きな違いだ。開発を担当した技術者曰く「商用車としての特性を考慮して、ドライバーとの対話を重視したアシスト特性にした」という。

ちなみに今回は三菱ふそうのテストコースによる試乗だったので公道では許されていない手を放した状態での走行も試してみたのだが、各国各地域の技術指針にのっとり、手放しが検知されるとほどなくして警報ブザー&ディスプレイ表示による報知がしっかりと行われ、そのまま手放しを続けると60秒しないうちに車線中央維持機能が解除された。

カメラモニターシステムとの融合

試乗を通じ、大型車に対する自動化レベル2技術の搭載はとても効果的であることがわかった。アダプティブ・クルーズ・コントロールのアクセルとブレーキ制御、そしてステアリング操舵支援の組み合わせによって、筆者の体感値として疲労度は半分程度にまで減少した。また、この普及により、長距離走行の機会が多い大型商用車の世界でも事故の抑制やヒヤリ・ハットの減少に期待がもてる。

ダイムラートラックAGの大型トラックと筆者(筆者撮影)

国土交通省によると2018年の1年間に生産された乗用車のうち、アダプティブ・クルーズ・コントロールの装着率は53.3%、車線中央維持機能では29.6%。これが大型車のアダプティブ・クルーズ・コントロールとなると28.9%と半分程度にまで値は下がる(車線中央維持機能はスーパーグレートが初なので統計データなし)。

この先、自動化レベル2の技術を搭載した大型車は独自に進化すると言われている。その筆頭がカメラモニターシステムとの融合だ。カメラモニターシステムとは、ドアミラーの鏡を光学式カメラに置き換えた先進安全技術のことで、鏡と比べてより広範囲の後方視界の確認ができ、夜間の視認性も向上する。すでにアクトロスには実装されていて、プロフェッショナルドライバーのための支援技術として各国から高い評価を受けている。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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