地球を席巻した人間を超える生命は生まれるか 生命の進化は自らをデザインする能力で決まる
ライフ2.0は自らのソフトウェアをデザインする能力を持っているため、ライフ1.0よりもはるかに賢くなれる。高い知能を持つには、大量のハードウェア(原子からできている)と大量のソフトウェア(ビットからできている)の両方が必要である。われわれ人間のハードウェアのほとんどは生まれた後に(成長によって)付け加えられるので、最終的な身体の大きさが母親の産道の幅によって制限されることはない。
それと同様に、われわれ人間のソフトウェアのほとんどは生まれた後に(学習によって)付け加えられるので、最終的な知能は、受胎のときに1.0スタイルのDNAを介して受け継がれる情報の量によって制限は受けない。私のいまの体重は生まれたときの約25倍だし、脳の中のニューロン同士をつなぐシナプス結合は、生まれたときに受け継いだDNAの約10万倍の情報を保存することができる。
あなたのシナプスが情報量にしておよそ100テラバイト相当の知識や技能をすべて保存しているのに対し、DNAが保存できる情報量は約1ギガバイト、ダウンロードした映画1本がかろうじて収まる程度だ。そのため、乳児が生まれながらにして完璧な英語をしゃべったり、大学の入学試験でトップの成績を取ったりするのは物理的に不可能である。
両親からもらったメインの情報モジュール(DNA)に十分な情報保存容量がないので、その情報を脳にあらかじめロードしておくすべはないのだ。
ライフ2.0がライフ1.0よりも賢くなれるワケ
ライフ2.0は、自らのソフトウェアをデザインできるおかげで、ライフ1.0よりも賢くなれるだけでなく、柔軟にもなれる。環境が変化したら、ライフ1.0は何世代もかけて徐々に進化して適応するしかないが、ライフ2.0はソフトウェアのアップデートによってほぼ瞬時に適応できる。例えば、抗生物質とたびたび出くわす細菌は何世代もかけて薬剤耐性を進化させることができるが、1個の細菌が行動を変えることは決してない。
それに対して、自分はピーナッツアレルギーだと知った少女は、瞬時に行動を変えてピーナッツを避けるようになる。この柔軟性のおかげでライフ2.0は、集団レベルでますます優位に立つ。人間のDNAに保存された情報は過去5万年でさほど劇的には進化していないが、集団として脳や書物やコンピューターに保存された情報は爆発的に増えてきた。
高度な音声言語を介したコミュニケーションを可能にするソフトウェアモジュールをインストールしたことで、ある人の脳に保存されている極めて有用な情報をほかの脳にコピーして、もとの脳が死んでからも残せるようになった。
読み書きを可能にするソフトウェアモジュールをインストールしたことで、記憶しておけるよりもはるかに多くの情報を保存して共有できるようにもなった。そして、(例えば科学や工学を学んで)テクノロジーを生み出すための脳のソフトウェアを編み出したことで、世界中の多くの人間が、何回かクリックするだけで世界中のほとんどの情報にアクセスできるようになった。
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