「新型肺炎」日本の備えに不安しか募らない理由 新型ウイルス対策の抜本的な見直しも要議論

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必要なのは国民を統制することではない。不安になった国民に寄り添い、サポートすることだ。

新型ウイルス対策の抜本的な見直しを真剣に検討するタイミングかもしれない。新型ウイルスに対する危機管理体制を確立するのは、日本にとって喫緊の課題だ。なぜなら、今後も中国発の新型ウイルスが出現し続けるからだ。この問題は、今こそ議論すべきだ。

まずは動物からヒトへ、そしてヒトからヒトへ

新しいウイルスは突然何もないところから生まれてくるわけではない。多くは動物に感染するウイルスで、何らかの突然変異が生じ、動物からヒトに感染するようになる。そして、さらに変異が生じ、ヒトからヒトに感染するようになる。

例えば、麻疹(はしか)はもともとウシやイヌの感染症だ。家畜化の過程でヒトの感染症へと変異した。ヒトのみに感染する天然痘は、元は齧歯(げっし)類のポックスウイルスから進化したと考えられている。人類社会が発展し、ネズミと「共生」するようになったため、人に感染する変異体が生まれた。

現在、新型ウイルスが最も生まれやすいのは中国だ。中国には大量の家畜が存在し、野生の動物を食べる習慣があるからだ。

2017年に世界で9億6700万頭のブタが飼育されていたが、このうち45%は中国だ。2位のアメリカの7.6%を大きく引き離して断トツのトップだ。

鶏は全世界で228億羽が飼育されているが、21.3%が中国だ。これも2位のインドネシアの9.5%を大きく引き離す。

今回の新型ウイルスの感染源はヘビの可能性が高いとされているし、SARSでは当初、ハクビシンが疑われた。中国では、このような野生の動物が食用に利用される。

さらに中国では、飼育場所が人間の生活圏と近接し、家畜や野生動物を生きたまま販売する習慣がある。動物からヒトにウイルスが感染してもおかしくはない。

この点は以前から危険性が指摘されてきた。『サイエンティフィック・アメリカン』誌の編集長を務めたフレッド・グテル氏は著書『人類が絶滅する6つのシナリオ』の中で、中国の「食肉用の動物を生きたまま販売する」伝統を紹介している。

例えば、「広東省の市場では、ニワトリが1羽ずつ入ったかごがいくつも積み上げられているのが普通」という感じだ。このような家畜は狭いところで、密集して生活しており、いったん感染症が流行すると、容易に伝搬する。そして、消費者や労働者にもうつる。これが中国から新型ウイルスが生まれ続ける理由だ。今後も状況は変わらないだろう。

中国は日本の隣国だ。私たちは今回のような事態を繰り返し経験し続ける。今こそ、患者目線による現実的な対応が急がれている。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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