「新型肺炎」日本の備えに不安しか募らない理由 新型ウイルス対策の抜本的な見直しも要議論

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SARSと比べた感染の広がりの早さを指摘する専門家の意見もある。その理由は、ウイルスの感染力が強いからではない。このことは現状では何とも言えない。ただ、2002~2003年のSARS流行時と比較して、中国が発展し、人の移動は多くなっている。

では、どうすればいいのか。まずは正確な情報をシェアすることだ。

今回の件に関し、中国政府も情報公開には前向きだ。1月12日には新型ウイルスの遺伝子配列情報を公表した。

SARSの際、最初の感染例を確認してから、公表までに約3カ月を要したのとは対照的だ。筆者の知人であるウイルス学の専門家は「毒性に関する評価は難しいが、受容体や結合タンパク質の配列を分析すれば、ヒトへの感染力はある程度は予想できる」と言う。

拭えない中国への不信感

ただ、中国への不信感は強い。武漢市は「ヒトからヒトへ感染する可能性は低い」という主旨の発言を繰り返してきたからだ。現状とはあまりにも違う。武漢以外での発症や疑い情報は香港紙が先行して報道するなど、周辺諸国を満足させるレベルではない。

1月22日、台湾の蔡英文総統は、中国政府に対して、彼らが持っている情報を完全に開示するように求めたくらいだ。

日本政府も中国と連携するとともに、情報開示を求めていくべきだろう。

医療現場でやるべきことは何だろうか。最優先すべきは、正確に診断することだ。そのためには医療現場、とくに最初に受診する開業医に診断手段を提供しなければならない。診断手段とは遺伝子検査だ。

具体的には、彼らが普段使っている検査会社に普通にオーダーずれば、結果がすぐに返ってくるようにすることだ。

この体制の整備は、厚生労働省がやる気になれば、すぐにできる。ウイルスの遺伝子配列がわかれば、遺伝子検査のシステムのセットアップは容易だからだ。あとは検査費用を助成、あるいは健康保険で賄えばいい。

1人の検査費用が1万円で、100万人が受けたとしても予算額は100億円だ。安倍晋三首相が決断すれば、すぐに出せる金額だろう。

そもそも医療機関を介する必要性すらないかもしれない。今回のウイルスは上気道感染なので、検体は咽頭のぬぐい液でいい。採血が必要な血液検体と異なり、一般人でも採取は可能だから、医療機関を介さず、検査を希望する人が直接、検査センターに検体を送ればいい。

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