OECD(経済協力開発機構)など、外部機関から日本の貧困を示すデータが公表されているのに、日本には適切な指標がないとの批判がある。そんな中、長妻昭厚生労働相の肝いりで厚労省が「相対的貧困率」を発表した。15.7%という数字が公表されると、鳩山由紀夫首相は大変ひどい数字と驚き、マスコミでも日本の貧困の実態が浮かび上がったとして取り上げている。
この相対的貧困率は、国立社会保障・人口問題研究所作業班がOECDに提供している作成基準に基づくもので、可処分所得の中央値の半分以下の所得しか得ていない人の割合だ。結果、日本では7人に1人が貧困にあえいでいることになる。また、08年、OECDが公表した加盟国30カ国の相対的貧困率と併せてみると、日本は4番目に貧困率が高い国となり、鳩山首相ならずとも驚くのも無理はない。
しかし、これが貧困の実態を表す指標として適切なものなのかどうか。相対的貧困率は、年功序列賃金のように若い世代と中高年世代の所得格差がある国では大きく出る傾向がある。また、高齢化が進んだ国では、年金だけに頼って生活している人と他に収入源がある人の割合が増えれば、相対的貧困率は高くなる。絶対的貧困に関しては、日本の貧困率は米英仏独など主要国と比べて低いというデータもある。データを読むに際しては最初に結論ありきではなく冷静な議論も必要だろう。
(『東洋経済 統計月報』編集部)
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