「新型フィット」の登場で振り返る3代目の価値 モデル末期でも対前年比82%を達成する実力

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一方、世の中では、2009年に三菱自動車が軽自動車の電気自動車「i‐MiEV」を法人向けに発売を開始し、翌2010年には個人向け販売もスタート。同年には日産「リーフ」も発売されるなど、EV導入の動きが急速に高まっていった。

それに対し、ホンダの主力車種といえるフィットがモーター走行をしないエンジン主体のハイブリッドしか持たないことに、よりモーターに重きを置いた電動化対応への遅れを覚えさせた。

ホンダのブランドメッセージは「パワー・オブ・ドリームズ」だが、エンジン・オブ・ドリームズではない。

現行モデルとなる3代目へ移行したのは、2013年である。ここでホンダは、ハイブリッド車の拡充を図ってきた。

リコールが多発した3代目

フィットのような小型車へは、モーター1個を使う「i‐DCD(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)」方式を開発し、「アコード」のような中型車種へはモーター2個を使う「i‐MMD(インテリジェント・マルチ・モード・ドライブ)」、そして「レジェンド」や「NSX」など、上級車種やスポーツカーのような高性能車種に向けてモーター3個を使う「SH‐AWD(スーパー・ハンドリング・オール・ホイール・ドライブ)」を開発したのである。

7速DCTを採用した「i‐DCD」は、走りの評価こそ高かったが……(写真:ホンダ)

3代目フィットに搭載されたi‐DCDは、ツインクラッチを用いた7段の変速機に円盤型の扁平モーターを組み込み、これをエンジンと合体させる。変速機の奇数段のギアが選択されているときに、デュアルクラッチを切り離すことでモーター走行が行われ、偶数段を選びクラッチをつなぐとハイブリッド走行になる。

そして高速巡行では高いギアの段が選ばれ、エンジンのみを低回転で使って燃費を稼ぐ。減速の際には、奇数段の3速を介して回生し、リチウムイオンバッテリーに充電する。

機能を整理すると、以前のIMAに比べて多くのシーンでモーター走行が可能となり、7段の変速機を利用することでエンジンもより効率のよい(燃費がよい)運転状況を選んで働かせることができる、というわけだ。

ところが、上記のシステム解説からも想像できるかもしれないが、制御が複雑となってしまった。それだけが原因ではないが、結果的に7回ものリコールにつながってしまうのである。

そして今後ホンダのハイブリッドシステムは、2個のモーターを使うi‐MMDが主力となり、次期フィットもそうなることが発表されている。

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