「新型フィット」の登場で振り返る3代目の価値 モデル末期でも対前年比82%を達成する実力
もし、フィットがセンタータンクプラットフォームを採用していなかったら、競合他車と同じように後席下に燃料タンクを配置することになり、後席座面のチップアップ機構は不可能になる。
また、通常どおり排気の消音器(マフラー)を荷室下へ配置していたら、床下への荷室容量の増大も難しい。センタータンクプラットフォームという独創が、唯一無二の魅力を生み出す源泉であった。
加えて初代フィットは、大きなヘッドライトの造形と、小さなラジエーターグリルによる愛嬌のある外観や、簡素に使い勝手をまとめた室内などにより、それまでにない小型2ボックスカーの存在感を明らかにし、そこに消費者が飛びついた。
唯一、ダッシュボードの造形によりフロントウィンドウに影が映りこむ弊害があったが、それさえも、ダッシュボードに反射を抑える布などを敷くといった流行を生み、消費者はそれ以上の商品性に魅了されたのであった。
ホンダらしい方式のハイブリッド
そして、「2001-2002年日本カー・オブ・ザ・イヤー」のほか、「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」、さらには「グッドデザイン賞」を受賞し、2002年には33年間にわたって国内で販売台数1位を堅持してきたトヨタ「カローラ」を上回り、首位を奪取したのである。
フォルクスワーゲン「ゴルフ」が、1974年に誕生して以来「世界の小型車の規範」と称されたように、ゴルフより一回り小さなフィットは、誕生して間もなくコンパクト2ボックスカーとしてのブランドを確立したということができるだろう。
初代の成功を受け、2007年にフルモデルチェンジをした2代目フィットは、キープコンセプトの言葉がまさに当てはまる姿で現れた。
軽自動車の「N‐BOX」が、初代のキープコンセプトで軽自動車販売ナンバー1の実績を継続しているように、初代の成功が2代目フィットを牽引したといえる。2代目は全体的にそつのない仕上がりで、洗練されたフィットという印象で、より多くの人が違和感なく使えるクルマとなっていた。2010年には、はじめてハイブリッド車も追加となった。
2代目フィットで初登場したハイブリッド車は、1999年の初代「インサイト」でホンダが開発した、エンジンを主体とするIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)と呼ばれる電動化の手法による。モーターのみでのいわゆるEV走行はしない。2輪、4輪、汎用を含め世界最大のエンジンメーカーであるホンダらしい方式であった。
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