いつも戦場。思い続ける力~再建・大不況・電気自動車--益子修・三菱自動車工業社長

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 アイ・ミーブの反響は、益子も驚くほど大きかった。が、再建途上のカネのなさよ、である。初年度の生産台数はわずか2000台。補助金を勘案しても、価格は320万円。しかも、来年以降、日産「リーフ」5万台を筆頭に、欧米・中国の自動車メーカーがどっとEV量産車を出してくる。益子は慌てていない。

 「実証走行試験を50万キロやったのは、うちしかない。日産は1年半遅れ。1年半のいろんな評価、要望、データを次の開発、改良につなげていける。1年半の差は大きい」。リードを生かし、三菱自動車は欧州のPSAシトロエンとアイ・ミーブのOEM供給契約を提携。米国についても「一人でやるのがいいのか。提携するなら、相手は自動車会社か、(IT企業のような)非自動車会社か。今、一生懸命やっている」。

足元、在庫調整が終了し、あの岡崎工場も閉鎖を返上、2直操業に移行した。三菱自動車が生き残れるかどうか、まだ定かではない。が、04年との違いは、益子がいることだ。「会社は曲がりなりにも続いているが、辞めた人、どうにもならないつらい思いをした人がいっぱいいる。忘れちゃダメ。そういう人たちの気持ちを晴らすのが、われわれの仕事」。「思う」力が、今の三菱自動車のエンジン、いやモーターである。=敬称略=

(撮影:今井康一、吉野純治)

ますこ・おさむ
ごく自然に気を配り、心を砕く。インドネシア駐在時代、通貨危機で借りたカネをわずか1年で本社に返した。部下は「こんな大変なときに返さなくても」と驚いたが、借りたほうが大変なら、貸すほうも大変だったはず。早く返せば、向こうも助かる。それが益子である。 

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