中国が進める「1国2制度」は台湾では不可能だ 「ひまわり学生運動」リーダーが語る総統選

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――今回、国民党が得た票数(総統選で552万票、立法院選で472万票)をどう評価しますか。また、台湾における国民党の存在理由は何だと考えますか。

今回、韓氏と国民党に集まった多くの票のすべてが、「92共識」(「92年コンセンサス」)と「一つの中国」といった言葉に代表される両岸関係(台湾と中国の関係)に同意しているわけではないと見ています。韓氏の支持者の中には、民進党政権への不満票もあると思います。とくに年金改革で不利な待遇を強いられた軍人や公務員、教職員らは余計にそうでしょう。

注)「92共識」=1992年に中華民国(台湾)側の海峡交流基金会と、中国側の海峡両岸関係協会が香港で行った協議。台湾側は「「双方とも『一つの中国』は堅持しつつ、その意味の解釈は各自で異なることを認める」(いわゆる一中各表)と主張し、中国側は「双方とも『一つの中国』を堅持する」(いわゆる一中原則)とした内容で、互いにここで「一つの中国」が合意されたと主張している。

国民党が再起する可能性はあるのか

国民党は階級対立と社会的葛藤が生じている部分をうまく拾い上げ、ポピュリズム的に有権者に訴えることに一部成功したと思います。しかし、今後の国民党は改革こそ唯一の進むべき道だと思います。核となる支持層である高齢者に訴えるだけでなく、若い世代へアピールできるのか。もっと「本土化」(台湾は中国の一部ではなく、台湾は台湾だとする考え)を採れるのかどうか、「92共識」や「一つの中国」といった姿勢を放棄できるのかどうか。

台湾の主権と国家の安全を図るという立場に立って、民主化の視点から自らの役割を再考していくことこそが、国民党全体の課題でしょう。そうしてこそ、国民党は自らの生存空間を広げることができるのではないでしょうか。

――国民党が敗北した理由は何でしょうか。国民党が再起する可能性はあるのでしょうか。

われわれが出せる結論は、中国が提案する「1国2制度」は、台湾において確実に不可能だということです。それなのに、国民党はいまだにそれを擁護したことが重大な敗北要因だと考えています。一方で、韓氏の選挙戦略は台湾社会内での対立や葛藤を引き起こし、苦痛と不満を自ら増幅させている一部の民心をつかみました。したがって、民進党はこうした社会での不満をどう解消していくかという問題に向き合わなければなりません。

例えば、もともと民進党を支持していた多くのタクシー運転手は、今回の選挙戦で次第に韓氏を支持するようになってしまいました。彼らの多くはウーバーなどの新しいサービスの挑戦に直面しています。そのような状況で、民進党政権からの配慮を感じられなかったのです。

グローバルなサービスは世界中に広がる中、政府は台湾の伝統的な産業を支援しなければなりません。これは世界的なジレンマですが、台湾の伝統・既存産業が持つ技術レベルと資本は、世界的に見て競争力が低いことも直視すべきでしょう。伝統・既存産業をどのように保護し、現在直面している危機状況からどう改革できるか。これこそ、われわれが解決すべき問題です。

次ページ民進党政権が解決できなかったこと
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事