京都に「世界中の高級チョコ店」が溶け込む必然 町家をはじめとする歴史的景観になじむ

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京都市内には、町家をまるごと利用した高級チョコレート店が多い。アメリカ・サンフランシスコ発「ダンデライオン・チョコレート」は、築100年以上の町家(京都市指定伝統的建造物)をリノベーションした。

ダンデライオン・チョコレート京都東山一念坂店(c)Dandelion Chocolate Japan

ダンデライオン・チョコレート・ジャパンCEO堀淵 清治さんは「新しいものを再定義することが、イノベーション。新しいだけでなく懐かしさがあるものが時代を変えます。かつて日本全体にはクラフト(手工芸)の文化があった。それを引き継いでいるのは古い都市です。私たちのコンセプトを伝える場所は近代的で商業的なビルでなく、できれば歴史とキャラクターのある日本の都市で、一戸建て。そう選んでいくと必然的にここになりました」と話す。

「セゾン ド セツコ京都ショコラトリー」は茶室のような趣。茶筅でチョコレートドリンクを作るメニューがある(筆者撮影)

扇子の専門店だった町家に出店した高級チョコレートブランドもある。メリーチョコレートの高級ブランド「セゾン ド セツコ 京都ショコラトリー」の店舗は、のれんをくぐり、靴を脱いであがると、坪庭が見える心地よい畳の部屋が広がる。

「ここは築100年以上で、投扇興(伝統的なお座敷遊び)のために所有していた町家でした。京都出店を考えていたところ人を介してご紹介いただきましたが、契約はスムーズでした。家主さんが長年メリーチョコレートをご愛用くださっていました」(メリーチョコレート 広報) 

町家を守りたい京都市とチョコ店の思惑が一致

京町家を利用した高級チョコレート店は、京都を未来へつなぐ役割も担っている。京都市のデータ(2016年調査)によると、市内に京町家は約4万軒が残っているが、2009年からの7年間で、5602軒もの町家がなくなってしまった。もちろんこの先、増えることはない。

問題を受けて京都市は、2015年に町家を守るための専任部局を作り、建築・不動産関係団体と協力しながら、町家を使いたい人と家主のマッチングを行っている。

パリ風のカフェテラス。ジャン=ポール・エヴァン京都本店では、2019年10、11月に「京菓子司 末富」とコラボレーションしたチョコレート入り上菓子を出した(筆者撮影)

2017年11月には「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」を制定、2018年10月には、瓦や外壁、格子などの景観に関わる修理などの工事費用の一部を、最大で1軒上限250万円補助する「指定京町家改修補助金」制度もできた。

京町家は昭和25年以前に建てられた伝統的な木造建築で、独特の意匠により京都の街並みを作っている。

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