「量子コンピューター」で世界はどう変わるのか Strangeworks CEOのW・ハーレー氏に聞く

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渋澤:2つ目の「量子コンピューティングへの誤解」とは?

ワーレー:誤解にあふれていますが、最大の誤解は「量子コンピューターは従来型のコンピューターに取って代わる」というものです。そうではなくて、これまで考えたこともないような、まったく新しい問題を解決する考え方を提供するツールになる、つまり「世の中を根本的に変えられる可能性がある」ということです。また、古典コンピューターと量子コンピューターは相反するものではなく、連携して機能するものです。

渋澤:新たな設計が可能になるということですね。過去の成功体験の延長線ではなく、まったく新しい成功体験を創るのはとくにこれからの日本社会では大事だと思います。では、3つ目の長期的な視野について教えてください。

地球的課題を解決する可能性

ワーレー:例えば、いま東京の真ん中に10億量子ビットのコンピューターを置いたとしましょう。誰もそれを活用できないわけです。つまり、今までの教育のあり方は、量子コンピューターを活用できる必要な人材を育成し、労働力を構築することに失敗している、という認識が必要です。

教育には時間がかかりますからね。先ほどの変曲点からわかるとおり「そのとき」はすぐそこまで来ていますが、人材の育成には最低でも2~3年かかるわけです。この驚くべきテクノロジーで世界を変えるために必要な労働力の供給ペースを、技術進歩が追い越してしまっているわけです。

渋澤:それは、重要なポイントですね。現在、私は経済同友会の教育革新プロジェクトチームのメンバーとして携わっており、これからの時代にふさわしい教育のあり方を企業経営者の視点から議論しています。

ワーレー:改めて日本の皆さんも含め、多くの人たちに理解してほしいことは、量子コンピューティングの活用によって、創薬や宇宙開発、あるいは気候変動など人類の地球的課題を解決する可能性があるということです。2018年のサウス・バイ・サウスウエスト(テキサス州のオースティンで開催される大イベント)の基調講演で申し上げたのはまさにこの観点でした。

また、私が「StrangeworksのシリーズA資金調達を日本の投資家と完了したい」と思い始めたのは、こうした長期的観点の話をしたときに、日本の投資家や経営者にはまさに長期的な持続可能性への関心が高いと今回の訪日で感じたからです。

渋澤:それは、とてもうれしいですね。2025年の万国博覧会の開催が大阪や関西に決定しましたが、ここで日本が世界に発したメッセージは持続可能性のある「いのち輝く未来社会のデザイン」です。そういう意味で、持続的な世の中を目指す長期的視野の投資を、日本が官民連携で実践することに大きな意義があると思います。

(翻訳、構成:八木翔太郎)

後編に続く。後編は1月11日配信予定です。

渋澤 健 シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役、コモンズ投信会長

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しぶさわけん / Ken Shibusawa

国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。

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