「量子コンピューター」で世界はどう変わるのか Strangeworks CEOのW・ハーレー氏に聞く

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ワーレー:実は特許の分野についても、以下の図が示すように2014~2016年に変曲点が見えています。

ただ量子コンピューティングの「アーキテクチャー(設計思想)」は、量子アニーリング(量子ゆらぎを用いた過程によって、解候補の集合から目的関数の最小値を探す方法)、サーキット・ゲイトモデル、イオントラップ、トポロジカルなど15種類以上もあり、業界の混乱の種となっています。そのため、私はColdQuanta のBo Ewald氏と共に、IEEE(電気・電子学会)で、命名法や測定基準の策定ワーキンググループの委員長を務めています。

渋澤:私も混乱してきました(笑)。そういう読者も多いと思うので、量子コンピューティングについて、素人が知るべきことを3つ挙げるとすれば、何になりますか。

量子コンピューターが切り開く「次の10年」とは?

ワーレー:①量子コンピューターが次の10年のコンピューターシステムを劇的に変えていくこと、②この分野には多くの誤解があること、そして③長期的な視点の大切さ、でしょうね。

渋澤健氏は独立系投資信託大手のコモンズ投信会長であるだけでなく、経済同友会の教育革新プロジェクトチームのメンバーなども務める。量子コンピューターの分野は一国の将来にもかかわるだけに、率直に疑問をぶつける(撮影:尾形文繁)

まず、従来型コンピューターが過去100年間で成し遂げた以上のことを、量子コンピューターは次の10年でコンピューターシステムを変えていきます。私は、新しい宇宙開発競争がAIではなく、量子コンピューティングの世界でどのように起きているのかを『TechCrunch』という業界誌に寄稿しましたが、各国がこぞって多額の投資を行っており、例えば中国も10億ドル(約1100億円)も量子コンピューター関連に投資しており、この分野ではアメリカは大きく後れを取っています。

渋澤:では日本は、この分野の研究開発でどのような状況にあると見ていますか。

ワーレー:日本では量子アニーリングを東京工業大学の西森秀稔教授が共同発明したように、優秀な研究者が多くいるというアドバンテージがあります。

またImPACT(革新的研究開発推進プログラム)、科学技術振興機構のQ-LEAP(光・量子飛躍フラッグシッププログラム)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトなどで最新の研究開発が行われています。実は私が訪日しているのも、こうした機関や日本の量子コンピューター系スタートアップの多くとともに日米協力関係を築くためです。

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