「上野アメ横」年末の風物詩がいま抱える課題 外国人観光客、食べ物屋が増えて街が変化

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「ウチに来るお客さんが、すっかり変わったよ。日によっては6~7割が外国人のお客さんじゃないか」

こう話すのは、「二木の菓子」ビック館で働く酒井照明氏だ。

御徒町駅近くにある「二木の菓子」。すぐ横には、たこ焼き店もある(筆者撮影)

70代となった現在は週3日の勤務だが、かつては常務取締役を務めた。初代アメ横問屋街連合会会長で「二木の菓子」「二木ゴルフ」を創業した二木源治氏(故人)からアメ横商人道を叩きこまれた“名物店員”だ。NHKの番組「新日本紀行」が、アメ横を取り上げた「ガード下の商魂」で登場したこともある。

「以前は『菓子食品現金問屋』を掲げて、ほとんどが日本人客の中で商売をしてきたけど、これだけ外国人客が増えると、免税対応やスマホの支払い対応もしなければならない。その分、機器の導入や従業員教育も必要になるからね」

かつては常務取締役も務めた酒井照明氏(筆者撮影)

筆者とは長年の顔見知りなので、こんな話し方だが、アメ横商人に共通する口調だ。二木の菓子がある一角は、昔ながらの“のぼり”も立つが、通行客は確かに変わった。

再び上野駅側に戻り、御徒町駅方面に向かって歩いた。アメ横センタービルの「ロングス」も名物店だ。ふだんはウォーキング用を取り扱う靴店だが、年末の時期は食料品店に変身。シャッターを下ろした店の前で「かまぼこセット」も売る。紅白のかまぼこ、伊達巻き、なると巻きが入った1000円のセットは人気だ。

食べ物屋が増え、街の雰囲気が一変

この近くには簡易食堂のような店も増えた。古くからの店以外で出店した最初は「モーゼスさんのケバブ」だと聞く。お客の人気を呼び、上野中通り側にも店がある。

食べ物屋が増えて以降、「アメ横は、夜が早く閉まって面白くない」という声は減ったが、お客のマナー悪化に眉をひそめる物販店の話も聞く。例えば「食べ歩きで汚れた手のまま、商品の衣料を触られ、展示できなくなった」という声だ。

近くの上野公園で行われる春の人気イベント「うえの桜フェスタ」の際も、花見客のマナー悪化を耳にしたが、完全な対応策はなく、地道な啓発活動を続けるしかないだろう。

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