箱根駅伝、選手が「厚底」靴をあえて選ぶ5大理由 「ユニフォームと靴の違い」に出る選手の信念
5つ目の理由は「練習用の廉価版が登場した」ことです。
トレーニングで使える「練習用」が登場した
ナイキのすさまじいところは、本番のレースからトレーニングまで、すべてを総取りしてしまったところです。
2019年7月に、「ヴェイパー」の廉価版で「ズームフライ3」という靴が登場しました。これは「ヴェイパー」と形状的にはほぼ同じですが、長い距離を走れるもので、値段は半額です。
実は、初代の「ヴェイパー」には、軽さを追求したがゆえに200~300km走るとへたってしまうという弱点がありました。高価な靴を、そう何足も潰して練習するわけにもいかない……そこに廉価版の「ズームフライ」が出て、感覚は変わらないままで、思う存分練習できるようになりました。
選手は、箱根駅伝に出るなら練習で30kmぐらいは走らなければなりません。でも、「本当は速いスピードで短い距離を走りたい」という選手が多くて、だらだら長い距離を走るのはイヤなものなんです。
ところが、「ズームフライ」を履くとラクに楽しく走れて、練習が快適に変わってしまう。クッション性も悪くないし、疲労も残りませんから、トレーニングとして最適です。しかも、いざ本番用の「ヴェイパー」に履き替えると「あっ、軽い!」となって、同じリズムのまま、さらに走れるわけです。
僕自身、一市民ランナーの感覚で言うと、市民ランナーにとっては、iPodが誕生したときぐらいの革命でした。長い距離を意味なく走るのはつまらないものですが、iPodによって飽きずに走れるようになった人が増えた。そして「ズームフライ」によって、長く走ることがそうきつく思わなくなったんです。
やっぱりここが「ナイキの本心」ですよ。靴を通して「走るって楽しいですよね!」というメッセージがある。『SHOE DOG(シュードッグ)』に描かれていましたが、もともとは、カリスマコーチのビル・バウワーマンとその教え子のフィル・ナイトが立ち上げた会社。スタートはランナーですからね。
「ヴェイパー」の進化とともに、ほかのメーカーもどんどん新しい靴を世の中に送り出しています。今後もランニングシューズはさらなる進化を遂げてゆくはずです。
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