トランプ大統領が12月に作った2つのレガシー USMCA(新NAFTA)批准へ、まさかの法案可決
12月18日、ナンシー・ペロシ下院議長率いる下院がトランプ大統領に対する弾劾訴追を可決した。トランプ大統領はジョンソン、クリントンに次ぐアメリカ史上3人目の弾劾訴追された大統領として不名誉なレガシーを残すこととなった。トランプ政権と民主党の対立はこれまでにないほど鮮明化した。
ところが、翌19日に異変が起きた。トランプ政権そして議会共和党が今議会で最重視してきたアジェンダであるUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定、新NAFTA)施行法案が、民主党が牛耳る下院で超党派の賛成多数(賛成385票、反対41票)で可決したのだ。ペロシ下院議長はトランプ氏に一撃を食らわせた直後にクリスマスプレゼントを贈った格好だ。
2020年1~3月にはUSMCA施行法案は上院を通過し、大統領の署名とともに成立する見通しだ。2019年12月18~19日の2日間で、トランプ氏は後世に伝わる最大のレガシーを2つつくったことになる。
「USMCA」は最も重要な通商上のテーマ
「もし議会がUSMCA施行法案を批准しなければ、アメリカには通商政策が存在しないこととなる」
ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は2019年2月に開催された下院歳入委員会の公聴会でこう語り、USMCAの批准に失敗すればトランプ政権の通商交渉の信頼性までが疑われることを強調した。また、USMCAと比べ「他(アメリカの貿易交渉)はすべて注釈に過ぎない」とも述べた。
2019年1~10月のアメリカの物品貿易額は対メキシコが1位、対カナダが2位で、対中国は3位である(商務省国勢調査局)。アメリカの全物品貿易額の約30%をメキシコとカナダで占める。1994年のNAFTA発効以降、北米企業の多くが国境を考慮せずに貿易投資を行い、今やサプライチェーンが複雑に絡み合う。北米地域はアメリカ経済そして同国産業界にとって最も重要な経済圏だ。
トランプ政権発足から約半年後の2017年8月にNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉が開始され、メキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領の任期最終日の2018年11月30日にはUSMCAが調印された。だが、2018年中間選挙で民主党が下院を奪還したことで、議会で党派対立が激化し膠着状態に陥り、USMCA施行法案は2020年大統領選前の可決は難しいともみられてきた。
とはいえ、下院民主党が設立したUSMCA作業部会とUSTRの交渉を経て、当初の調印から約1年後の2019年12月10日、アメリカ、メキシコ、カナダの3か国でUSMCA修正版が調印された。
修正版の調印に加え、同月19日の下院での可決によって、これまで北米でビジネスを行う企業に付きまとっていた不確実性が大幅に解消された。トランプ政権と民主党の対立がますます深まる中、奇跡的に調印に至ったのには3つの好機が重なったことが考えられる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら