ホークス一筋15年だった仕事人が送る快活人生 城所龍磨、2019年から球団職員として再始動
球団からオファーがあったときも迷いはなかった。

「NPB以外でプレイヤーとして続ける選択肢もありました。もちろんまだ野球はやりたかったので。よく“やめるのはいつでもできる”と言われますし。でも、僕はプロ野球選手になって、指導者になるのが夢だった。それだったら少しでも早いほうがいいと思いました」
プロ野球選手が将来の夢だと語る子どもたちは多い。幼いころの城所少年は、プロ野球選手を夢見つつ、その先のセカンドキャリアまでを確かに見据えていた。「子どもは好きですね」と語る城所にとって、少年野球の指導者は天職なのかもしれない。
娘たちに対する思い
2人の娘の父でもある城所。
昨年放送の『プロ野球戦力外通告』では、城所が当時6歳の長女・杏璃(あんり)ちゃんに引退を報告するシーンが印象的だった。
プロ野球選手ではなくなった今の仕事も、城所は娘たちに説明しているという。
「夜家にいないので、“パパはいつ帰ってくるの?”ってけっこう言われますね。野球教室でユニフォームを着ることもあるので、ユニフォーム姿はまだ見せられています」
プロ野球選手としての姿を見せることはできなくなってしまった。それでも、野球に携わる仕事を続けることで、いまだにユニフォーム姿を見せることができている。草野球に出場する時には、家族が試合を観戦しに来ることもあるそうだ。
一方で城所も、娘のお稽古事の発表会には頻繁に足を運ぶという。
「杏璃はダンスをやっていて、観にいったりしています。次女の花恋(かれん)はまだ3歳なので(ダンススクールに)入れないけど、そのうち入るんじゃないですかね。家でも踊っているので(笑)」
親として、城所は娘たちに対する思いをこう語る。
「好きなことをやってくれればいいです。とにかく、やりたいことをやってほしい。親が子どもを支配しているわけではないので」
「やらせる」のではなく、やりたいことを「やってほしい」。決して強制しない。
それは、ホークスジュニアアカデミーで野球を教えている子どもたちに対する思いとも共通している。城所が子どもたちに求めているのは、「自分の意思を出すこと」だという。
「人に言われたからやるのではなくて、“こう考えてやっています”というのを見せてほしい。そうすると、“もっとこうしていい”と僕も言える。向かっている目標があればこちらも伝えやすいですし、漠然とやらないでほしいですね」
指導者となった城所は、自らの引き出しを広げることを大事にしている。教え方のバリエーションを増やすことで、全員をうまくしてあげるための指導ができると。そのためにも、まずは教える城所自身が勉強中だそうだ。
「プロで培った感覚も大事ですけど、それが当てはまる子が何人いるかわからないですよね。僕がうまくさせられる子だけうまくするのでは意味がない。全員のうまくなるところを引き出してあげないと」