ホークス一筋15年だった仕事人が送る快活人生 城所龍磨、2019年から球団職員として再始動
城所が気にかけているのは、自らが教えている選手だけにとどまらない。
新しい仕事は現役時代と生活リズムが大きく変わらなかった反面、なかなかプロ野球の試合を観戦する機会がなかったそうだ。多忙な日々を過ごしながらも、ニュースや記事などを活用して、情報の収集は続けている。
「新しい選手がどんどん出てくるので、そういうところがプロ野球だなと思いました」
今シーズンのホークスは、育成出身選手の活躍が目立った。千賀滉大(せんが・こうだい)と甲斐拓也(かい・たくや)の育成出身バッテリーは、9月6日に育成出身選手史上初のノーヒットノーランを達成。世界野球プレミア12の日本代表に選出され、足で世界を魅了した周東佑京(しゅうとう・うきょう)は、シーズンでも25盗塁を記録した。
「ホークスは3軍制を敷いているので、それが活きてこないといけないと思います。育成からレギュラーを獲る選手がもっと多く出てきてほしいですね」
城所は「どの立場の選手でも、1年でも選手に長く現役を続けてほしい思いがあります」と、後輩たちへの熱い思いを口にした。
「僕は終わった身だけど、後輩たちのことをどうでもいいとは思えないですね」
その言葉は、日本シリーズ直後に戦力外通告を受けた城所だからこそ、より切実に響いてくる。元プロ野球選手として、城所は常に自分のことのように、選手たちのことを考えている。
城所は夢の続きをこれから叶える
そして少年野球の指導者としても、城所は子どもたちに寄り添い続ける。
「僕はプロ野球選手にはなれたけど、活躍できなかった。そういう思いを伝えていけたら」
プロ野球選手、そして指導者を夢見ていた城所。戦力外通告という形でプロ野球選手としての人生は突如として終わりを告げ、すぐに指導者としての人生が始まった。
突然の出来事だったとはいえ、幼いころの夢が叶ったのではないだろうか。そう訊くと、城所は「まだまだです」と即答した。
「僕の夢の続きには“プロ野球選手を教える指導者”があるので、まだまだ叶っていないですよ。今教えている子たちがプロ野球選手になったときに、僕もプロ野球のコーチとして一緒にいたいです」
常に相手を思いやり、良いところを伸ばしてあげる。2児の父として、少年野球の指導者として、そして未来の“プロ野球選手を教える指導者”として。城所が持つ3つの顔は、異なるようでいて、どれも同じ表情を見せてくれている。
城所が描く未来予想図は、そう遠くない未来、実現しそうな気がする。
(文中敬称略、文:中村翔)