ホークス一筋15年だった仕事人が送る快活人生 城所龍磨、2019年から球団職員として再始動
城所は外野守備と走塁のスペシャリストとしてホークス一筋でプレー。守備固めや代走での途中出場が多く、「城所待機中」のキャッチフレーズでも親しまれた。2016年の交流戦では、12球団トップの打率4割1分5厘でMVPに輝くなど、打撃が開花した。レギュラーの座を掴んだかと思われたが、若手の台頭もあり出場機会が徐々に減少。そして2018年オフに戦力外を言い渡された。
城所には後悔こそなかったが、「まだまだやれる」という思いもあり、12球団合同トライアウトを受験することにした。
2018年のトライアウトでは、打者は5人の投手と対戦。2打席連続凡退で迎えた3打席目、城所は四球を選び出塁。持ち味を存分に発揮するチャンスが訪れた。
すかさずスタートを切る。際どいタイミングながら、判定はセーフ。自慢の脚力を見せつけた。
勢いに乗った城所は4打席目、5打席目と連続安打。結果は2安打1盗塁。自らのアピールポイントを余すことなく出しきった。
しかし、城所にオファーの電話が鳴ることはなかった。
もうひとつの夢をかなえる城所
現役続行の道を閉ざされた城所だったが、決して悲観的になることはなかった。それは、もうひとつの夢があったからだ。その夢を幼いころから抱いていた。
「将来は野球を教える立場になりたいとずっと思っていました。プロ野球選手になって、引退したら子どもに野球を教えられるようにと」
ホークスの球団職員に転向した城所は、スポーツ振興部の所属となった。NPO法人ホークスジュニアアカデミーで、野球教室や野球大会の開催などを仕事としている。授業として、小学校に野球を教えに行くこともある。野球人口の拡大と発展を目指し、福岡県を中心に、九州圏内や山口県まで飛び回る多忙な日々だ。
「今、野球人口が減っている中で、気軽にできないスポーツになっていますよね。公園でバットやボールを使うことも、危ないからダメだと言われてしまう。そういう時代なので、僕らが各地に足を運ぶことで少しでも裾野を広げられたら」
子どもたちのための野球教室は、平日であれば学校が終わった後に開かれる。ごご6時半に開始することが多く、練習場所にはナイター設備が不可欠だという。
現役時代と同じく夜の仕事が中心であるため、生活リズムは大きく変わっていない。さらに、野球に携わる仕事を続けられていることもあり、環境が変わることに対する不安はあまりなかったと、城所は語る。