トヨタ「ヤリス」が変えたコンパクトカーの基準 先進技術がてんこ盛り、走りもハイレベル

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乗り心地については断定的なことは言えないが、サスペンションは当たりが柔らかく、よく動いている。しっとりとか、もっちりとか、そういう言葉を使いたくなるほど目は詰まっていないが、その分、軽やかさが際立っている。

新型ヤリスの車内(写真:トヨタ自動車)

ハイブリッドは小型軽量化を徹底する一方で、モーター出力を約30%拡大。バッテリーはリチウムイオン化している。実際、最高130㎞/hまでエンジンを始動せずに到達できるという。

確かに、EV走行領域は驚くほど広いし、何よりアクセルのオン・オフに対するトルクの出方が自然で、こちらも非常にドライブしやすかった。まだ数字は明らかではないが、燃費も相当なレベルにあるというから、さてアクアの立場は? と思ってしまった(編集部注:のちに燃費はWLTCモードで36.0km/Lと発表された)。

楽しさを感じた1.5Lの6速MT仕様

意外に楽しかったのが1.5Lの6速MT仕様。回転上昇には自然吸気ならではのドラマがあるし、シフトフィールも上々。ついホットハッチと呼びたくなる。そして1.0Lも車体に余裕がある分、キビキビとよく走ってくれた。法人需要、レンタカーなどが主な行き先になるというが、これならクルマでの移動が、苦にならないはずだ。

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先進技術もてんこ盛りで、トヨタ・セーフティ・センスにはレーダークルーズコントロールやレーントレーシングアシストも備わる。更に、操舵だけでなく加減速も制御する高度駐車支援システムも、試したところしっかり実用に適した精度を実現していた。

もちろん、まだ全容がつかめたわけではなく、一般道での試乗もできていないわけだが、しかし新しいこのヤリスが、これまでのトヨタのコンパクトカーとはまったく異なる視座で、まったく異なるゴールを目指して生み出されたことは間違いない。移動のふとした瞬間が気持ちよい、トヨタのというか日本のコンパクトカーの基準を大幅に底上げするクルマの登場と言えそうだ。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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