おかげでドライビングポジションは従来とは別物。ペダルのオフセットは少なく、わずかに小径化されたステアリングのチルト、テレスコピックの調整幅も広く、きちんとした姿勢が取れる。薄く、低めのダッシュボードのおかげで広々感もあり、また実際にシート位置が10㎜外に出されていることもあって、ちょっと大きなクルマに乗っているかのようだ。
世界を見渡せば、このセグメントのクルマは基本的には前席重視の使われ方で、後席に人が乗ることはそれほどないというのが現実。ヤリスは潔く、フォーカスを絞り込んだわけだが、それでも後席は、背もたれは確かに立っているものの頭上やつま先には十分余裕があり、決して拷問にはならない。
話を運転席に戻せば、上級グレードにはデジタルメーターが備わり、ソフトパッドが貼られ、ドアパネルにも広範囲にファブリックがあしらわれている。クオリティーという面でもこれなら文句は出ないだろう。
高得点のドライバビリティー
パワートレインは3種類を用意する。主力の1.5Lエンジンは高速燃焼を採用した直列3気筒。発進用固定ギアを持つダイレクトシフトCVTと6速MTをそろえる。ハイブリッドはその1.5Lエンジンに電気モーター、発電機の組み合わせ。後輪を電気モーター駆動にする待望のハイブリッド4WDも設定された。更に、改良版の1.0Lもそろえる。
発売前ということで、乗ったのはサーキット。まず1.5L+CVTでコースに出た。じわりとアクセルを踏み込んでいくと、エンジン回転数だけが先行することなく気持ちよく速度が高まっていく。3気筒ということで低回転域はややラフだが、回していくと滑らかになり苦しげな感じは皆無。途中で踏み足した時のツキもよく、また戻した時の減速感も絶妙。ドライバビリティーは高得点だ。
驚いたのが運動性能である。車体はいかにも軽く、高剛性。サスペンションは柔らかくストロークするが、姿勢変化は必要なだけで挙動は落ち着いている。切り返すような場面でも一発で動きがスッキリ収束するから走らせやすい。
それならばとタイヤが鳴くほど攻めても、ライントレースしやすいし限界は高く、平均台の幅が広くて自在にコントロールできるし安心感も大きいという具合で、いやはやものすごくハイレベルな乗り味を実現していたのである。
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