ロシア原発ビジネスは本当に「儲かる」のか 海外原発はほぼ赤字、発注国とのトラブルも

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アトムストロイエクスポルトは2018年10月、エジプト原子力発電所監督局との紛争を想定して、国際法律事務所Gowling WLGと法律顧問契約を結んだ。受注したエル・ダバア原発の建設をめぐる法的リスクに備えるためだ。原発建設用地の土壌条件に想定外の問題が見つかり、エジプト側と再交渉が必要になったという。

2018年10月22日付のロシア現地紙RBKによれば、「現在、建設に向けた準備作業段階で、予想される争議を回避するために法律顧問を雇った」とロスアトムの関係者が説明している。Gowlingへの顧問料は1年契約で45万6000ドルだが、交渉が長引けば追加費用も生じるとされている。

南アフリカ、ベトナムで計画中止が相次ぐ

2012年には、ブルガリア政府がロスアトムと結んだベレネ原発建設契約を破棄した。政権が交代して原発政策が変わったこと、当初40億ユーロだった見積もり額が64億ユーロに膨らんだことなどが理由とされる。このケースではロスアトムが賠償請求をし、ブルガリア国営電力会社が6億ユーロの賠償金を支払うことで決着した。国際調停裁判所や欧州委員会も巻き込んだ仲裁手続きは2016年末まで続いた。

2018年6月にはロスアトムの受注がほぼ確定していた南アフリカ共和国の原発計画も中止となった。2017年に南アフリカの最高裁判所が環境保護団体の訴えを踏まえて中止を命じたためだ。総容量960万キロワットの大規模プロジェクトで、発注総額は約500億ドルと見込まれていた。2016年には、ロシアが優遇条件で80億ドルの融資を約束していたにもかかわらず、ベトナム政府が原発建設計画を中止した。

このように、政権交代や地元住民の反対で原発プロジェクトが中止、建設遅延を余儀なくされた例は多い。フィンランドでは環境アセスメントでヌマアマガエルの保護が求められ、インドでは地元漁業者の反対に直面している。発注国側からの条件変更や争議が頻発すれば、事業コストの増加や採算悪化につながりかねない。

とはいえ、トラブルに直面しながらも、ロスアトムが海外受注を増やしてきたことも事実だ。同社の10年先までの海外受注見込み額は2012年時点での665億ドルから、2016年時点では1334億ドルへ倍増している。

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