スマホに隠れた「国勢調査員」という影の役割 何かしらもっともらしい犯罪の証拠は探れる

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これまで大量監視を実践してきた国は、ぼくの知るかぎり第2次世界大戦の他の主要参戦国だ──1つはアメリカの敵、もう1つはアメリカの同盟相手。ナチスドイツとソ連では、その監視が最初に公式に登場したのは、一見すると人畜無害な国勢調査を通じてだった。その国の住民の公式計数と統計記録だ。ソ連初の全国国勢調査は1926年に行われたが、単純な計数を超えた裏の目的があった。公然とソ連市民に、その国籍を尋ねたのだ。

その結果は、ソヴィエトのエリート層を構成するロシア民族に対し、中央アジアの伝統を受けつぐウズベク人やカザフ人、タジク人、トルクメン人、グルジア人、アルメニア人の合計と比べると、自分たちのほうが少数民族なのだと納得させたのだった。これを知って、こうした文化を殲滅しようというスターリンの決意は大いに強化され、そうした人々を異質なマルクス・レーニン主義のイデオロギーへと「再教育」しようとする結果となった。

ナチスドイツの国勢調査も

1933年ナチスドイツの国勢調査もまた、似たような統計プロジェクトだったが、コンピュータ技術の助けを借りたものだった。第三帝国の人口を数え、それを統制して粛清する──主にユダヤ人とロマ人たち──のが狙いだった。それを終えてから、国境の外にいる人々に対する殺人的な活動を繰り出そうというわけだ。

この活動を支援すべく、第三帝国はアメリカのIBMのドイツでの子会社デホマグ社と組んだ。彼らはパンチカード計数装置の特許を持っていたのだった。これは一種のアナログコンピュータで、カードに開けた穴を数えてくれる。全市民がカード1枚であらわされ、そのカードの穴はそれぞれ、ある身元情報のマーカーをあらわしていた。22列目は宗教の行で、その最初の穴はプロテスタント、2番目の穴はカソリック、3番目はユダヤ教だ。1933年のナチ党は、まだ公式にはユダヤ人を民族ではなく宗教として認識していた。数年後にこの見方は捨てられ、その頃にはこの国勢調査情報は、ヨーロッパのユダヤ人を見つけて、殺人収容所へと移送するのに使われたのだった。

現代のスマートフォンは1台で、第三帝国とソ連をあわせた戦時中のマシンすべてを上回る計算能力を持っている。これを思い出すと、現代アメリカのICの技術支配のみならず、それが民主的統治にもたらす脅威の意味合いを理解しやすくなる。こうした国勢調査活動以来1世紀かそこらで、技術は驚異的に進歩したが、それを抑える法律や人間の良心はまるで進歩していない。

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