スノーデンが東京で下した大量監視告発の決断

米国諜報機関にいた彼は何を突き止めたのか

その存在をぼくに報せてくれたのは、会議などというつまらないものだった。それがNSAのやらかしていることの全貌について、ぼくの最初の疑念に火をつけたのだ。[……中略]

2009年にNSA勤めが始まった時点で、ぼくはNSAの手口についてはその他の世界よりほんのわずかに詳しい程度だった。ジャーナリストの報道から、ぼくはNSAの無数の監視イニシアチブが、9・11の直後にジョージ・W・ブッシュ大統領によって承認されたのを知っていた。特に、その中でも最も社会的な反発が強かったイニシアチブである、大統領監視プログラム(PSP)の中の令状なし盗聴部分については知っていた。これは数人のNSAと司法省の内部告発者の勇気により、2005年に『ニューヨーク・タイムズ』がすっぱ抜いたものだった。[……中略]

「大量監視」という用語のほうが、政府の好む「バルク収集」よりもぼくにとっては、そしてたぶん多くの人にとっても、もっと明瞭だと思う。「バルク収集」というのは、ぼくから見ればNSAの業務について、インチキなほどあいまいな印象を与えかねないと思う。「バルク収集」は、特に忙しい郵便局や下水局のように聞こえて、存在するあらゆるデジタル通信の記録への完全アクセスを実現し、それをこっそり所有しようという壮大な活動ではないような印象を与える。

でもひとたび共通の用語が確立されたとしても、誤解の余地は多い。ほとんどの人は今日ですら、大量監視を通信の内容という観点で考える──つまり電話をかけたりメールを書いたりするときに実際に使っている言葉だ。政府がそうした内容については比較的気にしないことがわかると、みんな政府の監視についてもあまり気にしないようになりがちだ。安心してしまうのも、ある程度は無理もない。

書かれぬ、語られぬ情報のほうが大事

というのも、ぼくたちが自分の通信について、独得の内面を明かす親密な性質だと考えがちなものは、ほとんど指紋のように個人的な声や、テキストメッセージで送るセルフィーの、真似のできない表情などだからだ。でも残念ながら真実は、通信の内容はその他の側面ほどの情報量を持つことはほとんどない──行動のもっと広い文脈やパターンをあらわにする、書かれぬ、語られぬ情報のほうが大事なのだ。

NSAはこれを「メタデータ」と呼ぶ。この頭についた「メタ」は、通常は「上の」「越えた」と訳されるけれど、ここでは「~についての」という意味だ。メタデータというのは、データについてのデータだ。それはもっと正確にいえば、データがつくり出すデータだ──データを有用にする、各種のタグやマーカーとなる。でもメタデータについて最も直接的に考えるなら、「活動データ」だと思えばいい。自分のデバイスでやるあらゆることの記録や、そのデバイスが独自にやることすべての記録だ。

たとえば電話での通話を考えよう。そのメタデータは、通話の日付や時間、通話時間、発信番号、受信番号、その位置などを含む。メールのメタデータは、それを書いたコンピュータの機種、場所、書いた時間、そのコンピュータの持ち主、メールの送信者、受信者、送受信の場所と時間、送り手と受け手以外に誰がそれにアクセスしたか、それがいつどこで起こったか、というようなことを含む。メタデータは監視者に対し、昨晩どこで寝たか、今朝何時に起きたかといったことを教えてくれる。日中に訪れたあらゆる場所を報せ、そこで過ごした時間も報せる。誰と接触し、誰に接触されたかも示せる。

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