“飲料自販機”設置競争の熾烈、転機に立つドル箱事業
東京郊外の路面に自販機2台(サントリー、ダイドードリンコ)を設置するある土地オーナーの場合、月の収入は電気料金控除後2台で1万2000円という。立地がよくないとはいえ、やや少ない印象だが、この土地オーナーは、「1坪あれば2~3台の自販機を置ける。この地代と考えれば満足できる」と語る。
さらにこのオーナーは、業界の設置競争の激しさをこう証言する。
「サントリーのオペレーターが、置かしてくださいと頼みに来た。ウチの立地ではあまり売れないよ。最初は断ったが、そのオペレーターの熱意に負けた。担当者は1円でも利益が出れば置きますという。たとえ利益が出なくても、サントリーの広告塔にもなるから、と」
また、ある飲料メーカーの担当者は、「1日500ミリリットルPET飲料が10本売れれば置く」と言う。自販機設置のバーはかなり低いようだ。
自販機販売の不振が続く中、より人が多く集まる好立地を求めて、自販機設置競争は激化する。そこでは置いてもらうために多額の“ショバ代”を払うケースも増えている。
最近ある大手飲料メーカーが、名古屋市役所内に自販機2台を3年間置くために、最初に3000万円の“ショバ代”を払ったことが話題になった。ライバル関係にある飲料メーカーの首脳は、「立地のよさで1台当たり販売平均の4倍に当たる年間1000ケースを販売できたとしても、投資の回収はできないだろう」と推測する。ちなみに1ケースとは缶コーヒーで30個、350ミリリットルPET飲料で24個に相当する量だ。
このほか大型SCなどでも熾烈な自販機設置競争が行われている。
その自販機1台当たりの販売金額が、飲料メーカーの設置競争もあり年々低下している。各社とも年間販売数量が200ケース以下の効率の低い自販機を多く抱えている。ある業界首脳は、「まさにチキンレース。だが、脱落はできない」と語る。各社とも、「低効率の自販機は撤収して、効率の高い立地にシフトする」と口をそろえるが、自販機台数の純減を公言する企業はない。