社員が疲弊「社内アンケート」が大量に来る根因 サブスク型サーベイの問題点はいったい何か

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そのうえで、調査結果を分析して課題を特定し、現場の環境・風土・マネジメント方法などを改善していき、効果を実感してもらうための理想のステップをお伝えする。しかし、こうした活動はすぐに効果が表れるものばかりではない。

そこでまず、お薦めしたいのは、回答内容に対して、きちんとリアクションをすること。うまく活用している企業の場合は、個人を特定できない形で回答結果をオープンにして、寄せられた定性コメントに対して役員が真摯に回答をしているところもある。地道な活動の積み重ねで、「サーベイに協力することは意味がある」と感じてもらうこと。このような誠実な対応によってサーベイ自体が、従業員満足の向上にもつながっているという。

従業員を顧客と捉えると…

ちなみに、サブスクリプション型のビジネスモデルには、カスタマーサクセスという考え方があるのをご存じだろうか。サブスクモデルは、カスタマーから継続的に利用(課金)してもらうことで初めて利益が出るビジネスモデルであるため、契約してもらうこと以上に、解約されないことの方が重要だ。サービス開始後に、「このサービスは価値がある」と使い続ける理由を感じてもらうことに注力している。

この考え方は、人事サーベイやツールにも通じる。本来、人事部や企画部も、従業員を顧客と捉えて社内カスタマーに価値のある活動にしないと、真に持続的な取り組みにはならないが、そこまでの意識で臨んでいる組織は少ないのが実態だ。

サーベイやツールはあくまで手段だ。こんな結果でしたという共有ではなく、そこでわかった事実を踏まえ、本質的な課題にどう手を打つのか、それを経営視点と現場視点を踏まえて施策の推進をして初めて意味がある。

とはいえ、こうした議論が増えてきたこと自体は、企業に、組織や人材をよりよくしていきたいという思想が浸透してきたということでもある。さて、読者の皆様の現場や組織はいかがだろうか。企業にとっても、個々人にとってもよりよい組織やエンゲージメントのあり方を考えるきっかけにしていただきたい。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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