こうした問題の原因を探ってみると、運用の実務を担っている人事部や企画部が「何のためにサーベイを実施するのか」という目的を曖昧にしたまま進めてしまっている場合が多い。
上司や経営からのリクエストをそのままサーベイの設問に盛り込むだけ。もしくは前任者が導入したサーベイをそのまま継続しているだけ。つまり「サーベイを実施する」という目の前の仕事しか見えておらず、目的を理解していない。だからこそ本当に必要な設問だけに取捨選択することもできていないのだ。
また、担当者の役割が調査の実施から回答結果の報告に留まっているような場合も要注意。そもそも従業員満足度やエンゲージメントといった指標自体、従来はあまり可視化されなかったものであるため、調査によって表れた数値や定性コメントを報告書にまとめるだけで、なんとなく“仕事をした”気になってしまう。問題提起や解決に向けた提案がおざなりになってしまいがちだ。
経営陣に報告する際も、明らかに数値が悪ければさすがに改善に向けた対策の検討が始まるだろうが、それほど悲惨な結果でなければ調査結果が何にも使われないまま、“形だけの”調査だけが定期的に実施され続けるという状況に陥りかねない。
形骸化を防ぐにはどうしたらいいか
では、このような「サーベイの形骸化」を防ぐにはどうしたらいいか。重要なのは、運用担当者がサーベイの目的を正しく理解すること。自社が抱えている課題は何か、サーベイを通して知りたいことは何で、その情報を基に何を実現したいのか、といった調査の背景まで認識することで、調査の中身は変わってくる。目的に沿ってサーベイの内容を精査することで、極力現場の負荷を抑えたシンプルなものになっていくはずだ。
次に見過ごされがちな要因は、導入コストの安さから試しに導入してみたものの、ツールをうまく使いこなせておらず、現場の従業員を振り回しているパターン。読者の皆様も、1度や2度はどう活用されたかよくわからないアンケート依頼に振り回された経験はないだろうか。ツールさえあれば万事解決と思い込んでいる人事や経営は要注意だ。
そうした思い込みは、サブスクリプション型サービスの特性のメリット・デメリットをよく理解していないことが根底にある。
確かに昨今のサブスク型サービスは、月額数百円からはじめられるようなサービスも多く、初めて利用する際は「利用料が〇カ月ゼロ円」のようなキャンペーンを行っているものも珍しくない。有料版と並行して機能を絞った無料版を提供しているサービスもあり、イニシャルコストがほとんどかからず、ランニングコストも安いのが特徴だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら