テレビ東京、「池袋エンタメビル」参入の勝算 落ち込む広告、放送外事業を育成できるか
さらに、中国を中心にアニメ版権やSNSゲームのライセンスを販売するライツ事業にも死角が見え始めている。中国の大手動画配信サービス「ビリビリ動画」などが日本のアニメ製作委員会に出資し始めているのだ。
テレビ東京などと製作委員会方式でアニメ版権へ出資する出版関係者は、「中国でのアニメ放送やゲーム展開を見込んで(日本アニメの製作委員会に)出資しているようだ。テレビ東京も、今まで中国展開で儲かっていた取り分が減少する可能性がある」と話す。
中国ではコンテンツ規制などの政治的問題がたびたび議論になっており、日本アニメの配信が突然停止されるリスクもある。ネットフリックスをはじめとした動画配信サービスによる日本のアニメ購入も多かったが、ネットフリックスはアニメ内製化の傾向を強めている。今後もテレビ東京の放送外事業の柱であるライツ事業が堅調に続くとは限らない。
ライブ事業でアニメ版権をテコ入れ
そうした中で満を持して打ち出したのが今回の池袋エンタメビル計画だ。
12月に開いた共同記者会見で、小孫社長は「とにかく面白いことをライブでやるということで(パートナー企業が)集まっている。テレビ東京はアニメや実写もやるが、それだけでは面白くない。特色の違う企業がこれだけ集まるのだから、いろんな形のコラボをしていきたい」と意気込む。
テレビ東京でアニメ・ライツ本部長を務める川崎由紀夫上席執行役員は「放送と放送外をミックスすることがイベント事業ならできるのではないか」と話し、今回のライブ事業が放送事業にもいいシナジー効果を与えることに期待をにじませる。
さらに、「今回、UUUMも(ビル運営に)参加している。ユーチューブが盛り上がっている時代に、テレビやネットでもっとできることはあると思う。そうした可能性を探るいい基地がこのイベント会場だ」(川崎氏)と語り、他業種との連携も狙いの一つとなっているようだ。
ただ、テレビ東京が運営するのは4〜5階の劇場だけ。「小さな事業、小さなイベントを行い、人気があがるようにしていきたい」(小孫社長)と語るが、劇場の収容人数は立ち席で400名と少なく、このイベント事業だけで何十億円もの売上高をあげることは難しい。
今回のビル事業を担当する講談社の松下卓也・事業開発部長は「今回のビル運営はライツ事業の拡大まで見据えて声をかけている。真の狙いは『版権(ライツ)ビジネス』。現在はアニメが舞台になるパターンがほとんどだが、舞台作品がアニメになってもおかしくない」と話す。ビル内で行われる演劇やイベントなどを関西などでも開催し、池袋エンタメビル発の版権ビジネス拡大を狙っている。
テレビ東京もこの狙いに乗って、自社のライツ事業をさらに拡大し、大ヒット作が続かないアニメ版権のテコ入れも可能になる。ライブ事業という新たな取り組みだけではなく、そこから花開くコンテンツを生み出せるのか。テレビ東京の放送外収入拡大に向けた布石は打たれたばかりだ。
テレビ東京ホールディングスの株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら