地域紙は再生可能か。常陽新聞「復刊」の成算 スマホ・タブレットを活用し、まずは1万部に挑む

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経営に参加できるような地方紙はないか--。案件を探していた折、目にしたのが03年8月の常陽新聞廃刊のニュースだった。「給料の遅配があっても支えてきた記者がいること、発刊地域の人口が多く部数増のポテンシャルが大きいこと」が決め手となり、約2000万円出資して新会社を設立。旧会社のブランドなどを買収することで再発行の準備に入った。

復刊と合わせて着手したのが身軽な経営の実現だ。かつて自社保有していた輪転機は使用せず、毎日新聞社への委託印刷に切り替えた。また、それまではすべての全国紙販売店と契約し、それぞれの販売店が個宅へと配達していたが、契約先を毎日新聞のみとした。これにより、刷り上った新聞を自社で輸送する業務もなくなった。毎日新聞が自社便に載せて東京の印刷所から各毎日新聞販売店へ運べば済んでしまうためだ。

輪転機の廃止、輸送の外部化によりコストを大幅に圧縮。スタッフは取材、編集作業、割付けなどに専念できるようになった。

タブレットやスマートフォンで読める「電子版」の提供も始めた。それでも、価格は従来の月間2000円強に据え置く。「地域の情報は必ず必要なもの。紙とデジタルを併用すれば、部数が伸びる余地は大きい」。

1万部達成後は版を細分化

目標とする部数1万部を実現できたらどうするのか。「配送地域の人口は103万人以上と大きい。まずは常磐線沿線とつくばエキスプレス沿線で版を分けたい」。楜澤社長が参考にしているのは、地域ごとに5版出している松本市の「市民タイムス」だ。

とはいえ、松本と茨城は環境が違う。茨城は読売新聞など全国紙が圧倒的に強い県だ。折しも県北を代表する茨城新聞も経営難が続き債務超過に。2月21日の臨時株主総会で新旧分離を決議して発行継続を目指すが、再建の先行きは不透明だ。

こうした環境下、常陽新聞の挑戦は無謀にも見える。ただ6カ月以上発行を続けて、部数1万部をクリアできれば、かつて加盟していた日本新聞協会に再び加盟できる。そうなると政府広報、自治体広報などが掲載され、収入構造は安定する。まずは地道な販売努力によりその段階まで進めるかどうかが最初の関門といえるだろう。「地元の皆さんは、まだ半信半疑だと思う。うまくいかなかったらすぐ止めるのではないか、と。そうではないということを示していくには時間が掛かると思う」。

週刊東洋経済2014年3月1日号〈2月24日発売〉 核心リポート03に加筆)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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