我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。 宮本輝、江部康二著
糖尿食といえば禁酒禁ビフテキ、低カロリーが常識だが、医師・江部康二氏が提唱する療法は趣がまったく異なる。肉も脂っこい料理も一向に構わないし、酒も蒸留酒なら飲んでよいというのだからありがたい。カロリー制限もなく、問題になるのは糖質だけ。つまりコメ、麦、砂糖、発酵酒だけ我慢すればよい。なぜそうなのかの根拠はたいへん面白く説得力がある。糖質によって食後の血糖値が急上昇することこそが血管に「嵐」を巻き起こして諸病の原因となるのだという。
この学説をまじめに自ら実践したのが宮本輝氏で、糖質制限食により症状は劇的に改善したという。血糖のメカニズムや高血糖の怖さ、カギを握るケトン体の説明など、両氏の対談は丁々発止、わかりやすい。途中で現代の医療と食生活が直面する深刻な問題点も俎上に載せられる。ただし日本の医学界ではこの説はなぜかまだ異端らしい。人間の体の不思議を知る、目からうろこの書である。(純)
東洋経済新報社 1575円
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