「アナ雪2」さえ油断できない中国の強烈な検閲 「クマのプー」やタランティーノも泣きを見た

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タランティーノが中国でドタキャンの憂き目にあったのは、今回が初めてではない。2013年の『ジャンゴ 繋がれざる者』は公開にこぎつけたのだが、公開初日に中止になった。理由は劇場で映画を見た中国政府関係者が暴力描写にショックを受けたことだと言われている。

それから1カ月後に再編集版が公開されたが、その頃にはもう海賊版が出回っており、わざわざ映画館を訪れる客はほとんどいなかった。海賊版は中国市場で大きな問題で、それを避けるためにも、米中同時公開はかなり重要項目なのだ。

しかし、中国での公開日を決める権利はハリウッドにない。中国政府は自国の映画が不利にならないよう配慮して公開日を決める。とくに正月などのおいしい時期をハリウッドに渡そうとしない。

また、中国では儲かっているからといって、劇場で長期間上映され続けるわけでもない。人気作であっても、一定期間が来たら次の新作に切り替わることが多い。

日本でアナ雪1作目は16週間も1位をキープし、北米外では最大の売り上げを達成したのだが、こんなことは中国では起こりえない。もっとも、16週間公開したとしても、その間に海賊版が出回っているので、ロングランヒットは期待できないだろう。

「日本市場」の魅力は衰えていない

つまりアナ雪2も、中国では最終的にどうなるかわからない。他方で、長い間、世界2位の市場だった日本では、安定したヒットが期待できる。さらに、最近はボヘラプが130億円、R指定のジョーカーが45億円を超えるといううれしいサプライズもあった。

アナ雪2でもサプライズが起きるかどうかは、映画の力次第。そして映画の力で決まるという健全さは、実は映画を作る側にとって非常にありがたいことなのだ。世界3位にランクダウンはしても、日本市場の魅力は、ハリウッドにとってまだまだ衰えてはいない。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
X:@yukisaruwatari
 

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