中小企業向けモラトリアム問題、楽観的な劇薬投与は過剰な副作用を生む
大臣就任直後、亀井氏は周囲に「ドーンとやる」という言葉を放ったそうだが、まさにその後、宣言どおりの展開となっている。
もっとも、亀井爆弾が炸裂したのは意外な分野。多くの人は「ドーン」とやる対象は郵政問題であると思っていたに違いない。ところが、あにはからんや、亀井爆弾は金融分野に投下された。中小・零細企業の資金繰り支援といえる借入金の返済猶予策の導入問題である。
それも、わざわざ「モラトリアム」というきなくさい表現をもってブチ上げたことによって、世間には悲喜こもごも、衝撃が走った。銀行の利息収入が絶たれるという読みから、株式市場では銀行株が軒並み大幅下落している。
それでも亀井大臣は怯まず、10月26日召集の臨時国会での「返済猶予法案」の成立を目指して法案策定作業の尻をたたいている。
返済猶予への課題
金融面からの中小・零細企業の支援策が必要であるという亀井大臣の判断は正しい。大臣就任早々、そのための対策実現に向けて動き出した。その機敏さには拍手を送りたい。実際、中小・零細企業は不況にあえぎ、倒産が絶えない。総務省の『事業所・企業統計調査』などを見ると、わが国の中小企業数は1986年の532万社を直近のピークに、その後は一貫して減少。おそらく現時点では、400万社を割り込んでいるに違いない。
いうまでもなく、中小・零細企業層はわが国の経済、雇用を支えている。そんな社会の重要な岩盤が崩れかかる状況を放置したままでよいわけはない。何らかの手を打とうとする亀井大臣の考え方に賛同したい。