中小企業向けモラトリアム問題、楽観的な劇薬投与は過剰な副作用を生む



 それだけに、実効性があり、しかも副作用と呼ばれるような新たな問題を誘発させない政策の立案と実行が求められる。要は、画竜点睛を欠くことがあってはならないということである。

そのために、第一に指摘したいのは、返済猶予の主体となる銀行など金融機関の負担が過大にならないようにすることである。返済猶予が自身の収益悪化をもたらすとなれば、金融機関は中小・零細企業向けの新規融資にことのほか慎重にならざるをえなくなる。貸し渋りの助長である。結果として、かえって中小・零細企業金融が細れば、支援という目的とは裏腹なマイナス効果が発生してしまう。

第二に、返済猶予がその対象企業の経営悪化を周囲に印象づけることがないように工夫しなければならない。企業は金融面だけで呼吸しているわけではない。金融は当該企業と金融機関の間だけに存在しているわけではない、といったほうが妥当かもしれない。仕入れ代金など企業間の資金決済も金融であり、支払手形、買掛金などがその具体的手段となっている。

この企業間金融の状況は、企業相互間で授受される信用のレベルを示す企業間信用である程度把握できる。『法人企業統計季報』などのデータから手形決済、買掛金・売掛金の規模の増減率で算出するかぎりでは、企業間信用は2007年から悪化局面に入り、08年9月のリーマンショック後、一段と悪化していることが理解できる。

手形サイトの大幅短縮化、現金決済化から、さらには、売れた分だけ仕入れたことにする「消化仕入れ」へと、巨大小売業、ダイエーが仕入れ代金の資金決済面で著しい苦境場面に突入したのは02年前後のこと。近年では、この頃が企業間信用全体の最も悪化した時期だったが、今はそれを超える悪化ぶりを示している。

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