死んだヤマもよみがえる神戸製鋼の省エネ製鉄法、資源活用の未来図を塗り替える!?
生産量と市場に課題だが解決の切り札も登場
ところが新工程では、こうした事前処理の必要がない。そのため、付帯設備を含む建設コストは破格の安さとなる。原料そのものも低級品で十分。さらに、同じ量を生産した場合の比較では、二酸化炭素の排出量を2割削減することが可能になる。
海外からも熱い視線が注がれている。最終的にはMNDの立ち上がりを見極めたうえでの判断となるだろうが、インドやウクライナでは、かなり具体的な段階までITmk3採用の話が進んでいるという。神戸製鋼では、今後、プラント製造、プラント会社へのライセンス供与、合弁でのナゲットの製造・販売という三つの事業モデルを軸に、地域ごとの戦略を詰めていく計画だ。
ただしこの画期的新製法も、“いいことずくめ”ではない。普及に向け、立ちはだかる難題の一つが、現時点で生産量に限界があることだ。
ITmk3の生産量は1基当たりで年間50万トン。新製法の要であり、生産量を決定づける回転炉の規模で、「直径50メートル」が操業技術の面から現時点での上限であり、生産量もこの大きさに比例するからだ。大量生産という点では、同じ期間で何百万トンも生産できる高炉には太刀打ちできない。MNDでも製品の用途の念頭に置かれているのは、不純物の多い鉄スクラップを電気炉で溶かす際の希釈材という補助的な役割だ。