死んだヤマもよみがえる神戸製鋼の省エネ製鉄法、資源活用の未来図を塗り替える!?
独自技術の川上導入で資源の勢力図を変える
どんな新技術も開発には長い時間を要する。天ぷら石炭も同様だった。
始まりは、1970年代に研究が始まった石炭液化技術。石炭を溶かして石油の代替品に加工する前段階として、石炭の中の水分を除去する必要があった。「鉄冷え」と呼ばれる鉄鋼需要低迷などを受け、石炭液化自体は90年代に頓挫したが、水分除去技術だけは開発チームの「野良犬のような」(村越部長)執念によって天ぷら石炭へと結実した。
ITmk3も、元はといえば失敗からスタートした技術だ。鉄が溶けるのは1500度以上というのが冶金の常識だった。ところが、実験室で誤って鉄鉱石に石炭をまぶして熱したら1300度で溶けた。これがブレークスルーになった。
良質な原料を新日本製鉄など大手に押さえられる中で、神戸製鋼が開発を進めてきた低品位鉱の活用技術。その開発途上のミスオペレーションから新技術は生まれた。その点で「神戸製鋼のDNAが生んだ技術」(真部本部長)にほかならない。
そのITmk3と天ぷら石炭をここまで育て上げたのが、技術部門を最前線で引っ張ってきた佐藤社長である。だからかもしれない。佐藤社長の描く青写真は実に壮大だ。
「シベリアや中央アジアのように、鉄鉱石だけ採れてコークスがない、資本もないから製鉄所は無理だ、とされてきた地域がある。でも、少しホラを吹かせてもらうと、二つの技術をコンバインすれば、世界のどこでも製鉄ができる」
二つの新技術の相乗作用はさらに大きく広がる可能性がある。