「失われた30年」に終止符を打つ日銀の秘策とは 「本物の」マイナス金利導入ならどうなる?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

デジタル通貨とセットで本物のマイナス金利政策を可能にする仕組みが、「一国二通貨制」だ。その仕組みを解説する。日本銀行がデジタル通貨(以下、デジタル円)を現在の円(以下、キャッシュ円)に加えて発行し、キャッシュ円ではなくデジタル円のほうを日本の基軸通貨とする。キャッシュ円は日本の第2の通貨という位置づけになる。

「本物の」マイナス金利を可能にする仕組みとは

日本銀行の政策金利は、デジタル円に対して設定されるようになる。そのうえで、デジタル円とキャッシュ円の為替レートを、クローリング・ペッグ制とする。

クローリング・ペッグ制とは、ある通貨のもう1つの通貨に対する為替レートを「一定の率」で上昇または下落させる仕組みのことをいう。現在でも、すでにニカラグアなど一部の新興国が自国通貨をドルに対してクローリング・ペッグするなど、現実に運用は行われており、とくに真新しい仕組みではない。

例えばデジタル円の政策金利がマイナス3%のときは、キャッシュ円はデジタル円に対して年率3%の割合で減価する、と設定することにより、キャッシュ円を保有するコストを設定することが可能になる。

つまり、このとき銀行の預金金利もマイナス3%だとして、それを避けようとお札の束をタンス預金しても、1年後にはキャッシュ円はデジタル円よりも3%減価しており、1年前だと1000デジタル円分の買い物をできたのが970デジタル円分の買い物しかできなくなっている。タンス預金は無力化されることになる。ドルやユーロなどの外国の通貨との為替レートも市場で裁定がはたらくため、とくに一国二通貨制が問題になることはない。

「デジタル通貨で本物のマイナス金利が可能になる」というと、特別な世界がはじまることを想像される方も少なくないかもしれない。実際には、残念ながら(?)デジタル通貨で本物のマイナス金利政策が行われても、社会・経済は今と何一つ変わらない。なぜなら、「実質ベース」でみればすでにこれまでも今この瞬間も、世界の多くの国の政策金利がマイナスだからだ。

次ページ本物のマイナス金利導入後の世界はこうなる
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事