お金の無料相談は人生設計を破綻させかねない 正しい「相談先」と「運用商品」を選ぶには?

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毎月貯めていく金額がわかったら、次は自分がいくらまでなら投資信託などのリスク商品を持つことができるのかを考え(ステップ2)、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAといった税制優遇の大きい口座を優先しながらお金の置き場所を決め(ステップ3)、資産全体で適切なポートフォリオを作成して(ステップ4)、最後に運用する商品を選びます(ステップ5)。

杉下さんとの面談では、この過程を丁寧に説明し、一緒に考えていきました。面談後は杉下さんが実行するだけです。早速、イデコとつみたてNISAの口座開設の手続きを始めました。仕組みをつくってしまえば、その後はお金について、あれこれと心配しなくてすみます。これが積立投資のよいところです。

実は、杉下さん、外資系生命保険会社に勤める友人からも資産形成の提案を受けていたそうです。勧められたのは、外貨建て保険。保険と運用にそれぞれ手数料がかかり、保険料は円をドルに変えて支払うために為替手数料もかかります。杉下さんは、資産形成に必要な「長期・分散・低コスト」を考えると、手数料の高い保険で運用していくことが合理的でないと思い、自分で運用することに決めました。

高い「手数料」を払っても運用成績は変わらない

お金の管理は、人任せにせず、自分で管理するのがいちばんです。何より手数料が安い。今は、信託報酬が0.2%前後の投資信託もあります。信託報酬の手数料は運用中ずっとかかりますので、安ければ安いほどよいのです。「高い手数料を支払えば、よりよい運用成績が得られる」なんてことはありません。

仮に過去10年間成績のよい商品があったとしても、この先10年も同じようによいとは限りませんし、今後確実にリターンが高い商品を選ぶこともできないのです。それならば、国内外の低コストのインデックスファンドで長期分散投資をしていくほうが合理的です。

基本的な方法を学ぶために、杉下さんのように、スタートアップのときだけ私たちFPを利用していただくのがよいでしょう。ただし、販売系ではない、きちんとフィデューシャリー・デューティ(顧客本位の取り組み)宣言をしたFPに、です。

無料セミナーや相談、金融機関の窓口などに行き、勧められるまま金融商品を買うと、資産形成に不適切な商品を買ってしまう可能性もあります。手数料が高いと、せっかくのリターンを損なうことにもなりかねません(逆に、手数料の高い商品は、販売側は儲かりますね)。FPを利用しなくても、拙著で丁寧に解説していますので、こちらも参考にしてください。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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