ヤフーとLINE「統合」はバラ色の未来を描けるか アジア市場への足がかりとブランド整理の思惑

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例えばLINEの存在感がある台湾とタイで、ソフトバンクが携帯電話事業に参入。LINEを起点にしたサービスを展開するといったシナリオならば商圏拡大の可能性を残すが、大きな強み、差異化要因を持つわけではなく、簡単な道のりではないだろう。

Yahoo!ブランドとの決別

両社の経営統合には、もう1つの側面がある。

ソフトバンクグループ全体でみた場合、以前ならばYahoo! JAPANブランドを事業の軸として前面に押し出してきたが、スマホ決済サービスの「PayPay(ペイペイ)」を立ち上げて以降は風向きが変化してきている。

フリーマーケットサービスを立ち上げる際、Yahoo! JAPANの主要サービスであるヤフオク!ブランドを用いず「PayPayフリマ」として立ち上げたことや、ヤフーショッピングと差異化したECサイトとして「PayPayモール」を立ち上げるなどの動きは象徴的だ。

PayPayは登録2000万ユーザーを突破し、QRコード決済でのトップをひた走っているが、収益化のメドは立っていない。“お得感”のみでひた走り、収益化を後回しにシェアを奪う手法は、かつてのYahoo! BB(ADSL技術を用いたインターネット接続事業)を彷彿とさせる。

それだけ決済事業で先行することに賭けているとも言えるが、同時に(Zホールディングスへの社名変更も含め)“Yahoo!ブランドからの決別”を意識しているのではないだろうか。

ソフトバンクは今後、事業統合の方向を見据えながら、ブランドを含めた事業全体の再編を行っていくだろうが、日本での事業展開ではPayPayブランドと決済事業を軸に収益化を狙っているのだろう。

“お得”で多くのユーザーを惹きつけ、地道な営業で加盟店を増やしたPayPayを収益化するための手段として、QR決済事業者としては2位の位置にいるLINEとの連携を強め、最終的にはYahoo!ブランドをベライゾンメディアに返納する――。

両社の経営統合には、ソフトバンクのそうした意図も見え隠れしている。アジア進出といった長期視点での戦略性に明確なシナリオを描いているのではなく、むしろ目の前の事業を見据えて、ソフトバンクグループとして動いた結果が、今回の経営統合最大の目的だろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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