ヤフーとLINE「統合」はバラ色の未来を描けるか アジア市場への足がかりとブランド整理の思惑

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例えば、LINE Payで支払いを行うと支払い先の事業者が持つLINEアカウントとひも付くという機能がある。クーポン発行など“お得情報をお届けする”という建て付けの機能で、事業者側は魅力的に感じるだろう。

しかし、支払いをしただけでDMが送りつけられる距離感の近さに驚く利用者も多いはずだ。両社が経営統合後、“パソコン世代におけるYahoo! JAPAN”と同じような、情報やサービスへとつながる入り口になりたいと思うならば、一定の距離感を保ちながらコミュニケーションツールとしてのLINEをどう生かすのか、具体的な施策が必要となろう。

モバイル領域における接触点として、LINEを起点としたサービスの再設計ができるかどうか。手探りの状況はしばらく続くだろう。

アジア市場戦略はソフトバンク次第

一方、経営統合の先にあると言われるアジア市場戦略を進めるには、もう一段の踏み込みが必要となる。日本市場では圧倒的なLINEだが、海外に目を向けると台湾とタイでこそFacebookに近い利用者数を持つものの、それ以外の地域における存在感はほとんどない。LINEユーザーが多いとされるインドネシアも、絶対的な人口が多いためユーザー数は多いが、Facebookと比較するとわずか6分の1にすぎない。

FacebookやInstagram、WhatsAppなどがグローバルで利用者数を増やし続けているのに対し、日本市場への依存度が極めて高く利用者数を伸ばす手段を見いだせていないLINEは成長軸を失っている。

一方、Yahoo! JAPANの“Yahoo!”ブランドは、持ち株会社であるZホールディングスがアメリカのベライゾンメディアから借り受けているもので、日本以外では使うことができない。しかも、ベライゾンメディアに支払っているブランド使用料は売り上げ全体の3%(2018年度で約286億円)で、これは営業利益の2割を占める。

つまり、両ブランドとも日本以外での存在感は希薄と言えるだろう。

経営統合の目的が一部で報じられてきたようにアジア市場への進出であるならば、そのZホールディングスの親会社でもあるソフトバンクの戦略がカギとなる。

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