しかし、問題は技術的なものにとどまりません。経済・社会的な問題も大きいのです。この面において極めて大きな変化が近い将来に起きるのは、間違いないことです。
社会的な影響でとくに大きなものとして、次の2つがあります。
第1は、職業ドライバーの失業です。この問題があるため、技術的に可能であっても、規制によって導入を制限するという事態が考えられます。
第2は、仮に利用が広まれば、経済活動の空間的パターンが変わることです。人々の移動の仕方が変化すれば、経済活動や住居の地域的な分布が今とは異なるものとなり、地価に影響を与えるでしょう。
大量失業問題を解決できるか?
技術的な観点だけからみれば、レベル5の自動運転が可能になれば、タクシーやトラック、バスなどの職業ドライバーは必要なくなります。
ただし、技術的に可能になったからといって、現実に使われるとは限りません。
自動運転が実際にどの程度利用されるかは、自動運転のコストに依存します。
ここでコストとは、直接的な利用費用や料金だけではなく、安全確保のために社会全体として必要とされるコストも含みます。また、失業や他の事業への影響も考える必要があります。
これらのコストがどうなるかは、市場の競争状況や法規制などにも依存します。
タクシーやトラック、バスなどに自動運転を導入する場合の大きな問題は、多くのドライバーが職を失う可能性です。
これまでも、自動化に伴って、タイピスト、電話交換手、エレベーター操作手などの仕事が不要になりました。しかし、変化はあまり大きな摩擦を起こすことなく進展しました。それは、経済成長が続いていたために、新しい職に就けたからです。
今のような低成長経済では、失業問題を解決するのは容易ではありません。
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