実際、日刊新聞法を基盤によくできたシステムになっている。新聞社が東京のキー局の株を握り、キー局が地方の放送局の株を握る。放送局以外も含め、関連会社は読売なら約150社、親会社を離れるときは関連会社に、「民下り」する。読売に入れば揺りかごから墓場まで。デジタル担当のメディア戦略局長がころころ替わるので「5年くらいやらなきゃ」と言ったら「下山さん、それじゃ年次が狂う」。官庁か、って(笑)。このシステムは読売に限らない。
渡邉主筆が唯一現実的になれなかったもの
──渡邉主筆の存在も大きい?
「健全な現実主義」という読売の基本形を作ったのが彼。その彼が唯一現実的になれなかったのがネット。社内報の発言をたどるとネットにあらがったのがわかる。
片や、ヤフーの初代社長、井上雅博氏は「インターネットとけんかをするな」。けんかをしても勝てないから。
NYTは有志がイノベーションレポートを出して、編集局長が解任され、そこから変わった。1年後に読売の記者がNYTのCEOにインタビューしているが、記事はイノベーションレポートには触れず、むしろNYTは「宅配制度を強化し、(中略)経営が安定した」と書く。その記事を渡邉さんが読んで、販売店の集まりで話す。
──新聞以外のメディアとして、ヤフーを取り上げました。
井上さんは合理的な人で、「新聞にあってネットにないものをやれ。新聞にないものなんて考えるな」と社員に言う。人々が求めるものは長時間かけて新聞に抽出されているという考え。しかも、ヤフトピの影響力が増し、自分たちの記事を発信したいという意見が出ると「(最大の記事提供者である)読売が抜けたらどうする」。
自らコンテンツを作ったらプラットフォーマーたりえないということを本能的にわかっていたから、広告料を新聞社と分け合うモデルを貫いた。逆に記事を提供する新聞社は、分け前がそれなりなので自前で有料モデルをやりにくくなる。バラ売りではブランドが見えず自殺行為だ。
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