デジタルで「成功した日経」と「微妙な読売」の差 ノンフィクション作家の下山進氏に聞く

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──ネットで課金ができた日経は、報道自体も変わってきている?

日本の新聞記者は、最初に支局に配属され、警察官、検事、役人に取り入って情報を聞き出し、「前打ち」という形で書き、それを本社に戻ってもやる。でも、半日すれば公開される情報で、そんなものに誰も金を払わなくなる。それを日経はよくわかっている。

金をもらえるのは、記者独自の見方から、「目の前の事象はこういう流れに位置づけられる、こう考えられる」と説明する記事。今年の新聞協会賞を受賞した「データの世紀」のような調査報道は腐りにくい。こうした日経の変化には、記者の個が立った記事に人は金を払うことを知っていたフィナンシャル・タイムズを2015年に買収したことが大きいと思う。

生き残るメディアの条件とは

──ヤフーもイノベーターのジレンマに陥りました。

パソコンからスマホへの転換に乗り遅れた。が、それも2012年に宮坂学氏が社長になると急速に転換した。今の川邊健太郎社長は、さらにメディア企業からデータ企業にヤフーを変えようとしている。その意味で、再びイノベーターのジレンマに陥らないよう変化し続けている。それがヤフーの強さの秘密だ。

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──生き残るメディアの条件は?

デジタル化、グローバル化を受容すること。コンテンツ提供者はメディア独自の分析、切り口がある情報や調査報道を核にした有料モデルが必須だ。プラットフォーマーは技術革新で優れたモデルが陳腐化しやすい。新しいアイデアを排除しないことが重要。

──取材は困難だったようですね。

約20年前にメディアの興亡を描いた『勝負の分かれ目』の際は、どの社の記者、幹部も自由に話してくれたが、今回はコンプライアンスを理由に基本、「広報を通す」。外部の人間と会って話したり考えたりする自由がないと、新しい発想は出にくいと思う。

OBへの締め付けも厳しいので、手紙を書いて自宅に送り、直接訪問を繰り返したら、靴を1足履き潰した。また、裁判の証拠など1次資料を読み込むと、当時の報道とは違う面が見えてきた。もちろん、「原稿を見せろ」という要求はすべて断った。

この歳になって、週刊誌記者時代に身に付けた手法を使うとは思わなかった。

(聞き手 筒井 幹雄)

週刊東洋経済編集部
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