新「MacBook Pro」が超高価でも支持されるワケ クリエイターの意見を徹底的に重視して刷新

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オーディオの進化は耳を疑うほどだった。

新しい16インチMacBook Proには左右合計6つのスピーカーを搭載しており、ウーハーは2つのドライバーを背中合わせに搭載することで振動を打ち消し合うことで、半オクターブ低い低音を鳴らすことを可能とした。そこから再生される音声は、まるで小型の高音質スピーカーをデスクに置いているかのような深い低音と広がるステレオ感で、非常に満足度の高い音楽や映画の体験を実現していた。iPhone 11、AirPods Proなど、昨今のアップルデバイスのサウンド品質には驚かされてきたが、 16インチMacBook Proにはそれらを上回る驚きがあった。

加えて3つのマイクをデバイス左側のメッシュ部分に搭載してオーディオ処理を行うことで、ヒス音(シューという背景ノイズ)を40%低減させたという。Podcast番組の収録を外部マイクに頼らず行うことはたやすく、またノイズの少なさはビデオ会議の音声をよりクリアに届けることができるようになる。クリエイティブ制作の現場だけでなく、ビジネスの現場でも、これ1台で質の高い遠隔会議を実現できるメリットを見いだすことができた。

モバイルワークステーションの金字塔として

現在のコンピューターのトレンドを見渡すと、ハイエンドモデルはMacではなく、WindowsベースのゲーミングPCが主導権を握っている。それはノート型でも同様で、Windows PCではすでに有機ELディスプレーを搭載し、デスクトップをも凌ぐパフォーマンスを誇るマシンを選ぶことができる。

そうした環境の中で、アップルはMacBook Proをどう育てるのか、難しい判断があったはずだ。スペックという側面で見れば、何をやってもWindows PCには敵わないとわかっていたからだ。そこでアップルはクリエイターの声を傾聴し、MacBook Proが選ばれる理由を強化する戦略に打って出た。その結果が、今回の16インチMacBook Proとして登場した。

おそらく日本でのオプション価格が発表されれば、全部のオプションを盛り込んだ金額とその高さに注目が集まるだろう。しかしいくら高くなってもクリエイターにとっては「その仕様が存在すること」が重要であり、いくらお金を出しても手に入らないことのほうが問題なのだ。

しかし幸いなことに、16インチMacBook Proのドルでの金額は据え置かれ、日本円ではむしろ価格が安くなった。プロの過酷な環境に備える高い基本性能はベーシックモデルにも共通している。例えばビジネスの現場で、5年以上の長い期間、より快適なコンピューター体験を手に入れる目的にも、16インチMacBook Proは最適なモデルといえるだろう。

2020年以降、13インチMacBook Pro、MacBook Airといった小型モデルに対しても、16インチモデルのテクノロジーやノウハウが踏襲されていくことになるはずだ。それでも、パフォーマンス、そして余裕のあるディスプレーサイズを備えるノートパソコンの存在価値は、長く維持されることになる。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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