ミスを極度に恐れる人が「実は損している」理由 焦って保身に走るほうがかえってよくない

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3つ目の理由は、ちょっとしたミスや失敗が起こる職場のほうが、得てして活気があっていい雰囲気だからです。完璧主義者ばかりがそろえば、失敗やミスは確かになくなりますが、同僚同士の会話も減り、なんだか暗い雰囲気になりがちです。ちょっとしたミスに対する叱責も強くなりがちで、仕事をするにも息が詰まってしまうでしょう。

実際、雑談では、失敗談を話すと場の空気がほぐれる、親近感が生まれるなんてことが、ビジネススキルとして言われます。

「ああでもない」「こうでもない」とわいわい言いながら乗り越えるからこそ、チームとしての連帯感や達成感につながるのではないでしょうか。

また、普段からミスや失敗が起こる職場は、いい意味で、ミスや失敗に「慣れて」います。ここ数年、「過去経験のないような大きな災害」が日本中で起こっていますが、そのたびに被害が出てしまうのは、「過去に経験がないから」です。

ちょっとしたミスや失敗を経験し、それを皆で乗り越えた実績があれば、いざ、「過去経験のないような大事件」が起きたとしても、「まずどのように対処すべきか」という基本動作ができるはずです。もちろん、大きなミスや失敗、事件や災害は起こらないに越したことはありません。しかし、何が起こるかわからない以上、できる限りの対策を取っておく必要があるのではないでしょうか。

小さなミスや失敗は、やがて起こってしまうかもしれない大きな事件のための「避難訓練」ともなるのです。

誰でも失敗はなくせない……ならば

このように、ミスや失敗は、職場の雰囲気をよくし、個人の能力向上のきっかけや新しいものを生み出すチャンスにもなりえます。ですから、ミスや失敗に的確に対処することで、職場における評価もぐんぐんと上げていくことができます。

『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ただ、多くの人は、失敗やミスをしてしまった時点で、焦って保身に走ってしまいがちです。失敗やミスをしたとき、絶対にしてはいけないのは、「焦る」「言い訳する」「隠す」なのですが、実に多くの人が、失敗した瞬間に焦って、ギリギリになるまで隠し続けます。場合によっては、自分の見える範囲だけで取り繕おうとし、バレたら言い訳し始める……という行動をとります。

確かにミスや失敗をしたら、誰でも焦ってしまうでしょう。それはやむを得ないことです。しかし、失敗やミスは、積極的に克服を目指すことで、前述の3つのメリットを得られるわけです。ミスや失敗で強烈な焦りが湧いてきたら、とにかく一呼吸おいて、積極的な解決を目指しましょう。

飯野 謙次 スタンフォード大学工学博士、東京大学特任研究員。

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いいの けんじ / Kenji Iino

1959年大阪生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、General Electric原子力発電部門へ入社。その後、スタンフォード大で機械工学・情報工学博士号を取得し、Ricoh Corp.へ入社。2000年、SYDROSE LPを設立、ゼネラルパートナーに就任(現職)。2002年、特定非営利活動法人 失敗学会副会長となる。著作には、『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』(日経BP)、6万部を突破した『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』(文響社)、『思考停止する職場』(大和書房)がある。

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