星野リゾートがハワイで打つ「米国温泉」の布石 念願の世界チェーンへ、北米進出に足がかり

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これまで星野リゾートが海外で運営してきたホテルは3つある。2015年4月から2019年5月まで運営を受託していた「星野リゾート Kia Ora ランギロア」(フランス領タヒチ)、2017年1月開業の「星のやバリ」(インドネシア)、2019年6月開業の「星のやグーグァン」(台湾)だ。

「ドルやユーロでも稼げないと、手遅れになる」と危機感を抱く星野佳路代表(記者撮影)

今回のサーフジャックは、日本人の集客が見込めるアジア・太平洋における戦略の延長線上にあるように見えるが、これまでの海外3ホテルとは異なり、北米進出の足がかりという重要なミッションを担っている。

ハワイは観光客の43%を西海岸、22%を東海岸のアメリカ人が占める。そんなハワイのサーフジャックを傘下に収めることで、「アメリカの旅行代理店とつながることや、現地のスタッフを星野リゾートらしい仲間に育てていくことで、アメリカに打って出るためのノウハウを蓄積する拠点」(星野代表)となりうる。

中国、ヨーロッパへの進出も検討

アメリカ進出の形態は現時点で、温泉リゾートホテルを考えているようだ。星野代表はアメリカでの開業について、「ロサンゼルスやニューヨークではないと思う。山脈地帯など、アメリカにある温泉地のどこかではないか」と語る。

星野代表によれば、アメリカのみならず中国でも具体的な運営案件が存在し、ヨーロッパへの進出も目指しているという。これまでの世界展開を第1段階とするなら、サーフジャックは星野リゾートにとって第2段階の試金石なのだ。

ハワイ進出を足がかりに、アメリカ本土進出をうかがっている。写真はハワイのワイキキビーチ(記者撮影)

それだけに、サーフジャックで実績を残すことがアメリカ本土進出の最低条件となる。課題はアメリカ本土からの集客だ。

「顧客の20%を占めるオーストラリアやニュージーランドからの集客は『星野リゾート トマム ザ・タワー』が人気のため、現地のエージェントとの関係を生かせる。だが、アメリカ本土からの集客は、これまで運営を担ってきたアメリカのアクア・アストン ホスピタリティーが強かった。この水準をどれくらい維持できるか」(星野代表)がカギとなる。

星野リゾートの高いブランド力を生かし、サーフジャックを日本人観光客で埋めることもできる。ただ、星野代表は「一時的には日本人でカバーするが、(恒久的に)日本人ばかりにするのはよくない」と、より難易度の高いアメリカ本土からの集客維持に挑む姿勢だ。

そのためには、アメリカ本土において、現地代理店との関係深化や一層のブランド訴求、認知度向上が欠かせない。逆にこれが実現すれば、念願のアメリカ本土進出が成功する公算も大きくなる。

「世界の星野」の実現には、楽園・ハワイでの成功がカギを握っている。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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