過剰供給のツケ、「関西ホテルバブル」に変調 ホテルリートの数値が悪化、安値競争も懸念

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新規供給のピークこそ過ぎつつあるものの、今後も大阪市や京都市内では依然としてホテルが供給される予定だ。とりわけ大阪市では昨年6月に条例が改正され、一定規模のロビーやレストランの設置義務が緩和されたことでホテル開発が容易になったことも拍車をかける。他方で頼みの訪日外国人は今年8月、11カ月ぶりに前年割れに転じるなど予断を許さない。

各社は対策を急ぐ。いちごホテルリートは10月、「ホテルビスタプレミオ京都」を売却した。売却資金を元手に他地域のホテルを取得したい考えで、「現在保有する関西のホテルも、今後は入れ替え対象になりうる」(いちごホテルリートの岩坂氏)。

対照的に、ジャパン・ホテル・リート投資法人は2月、「ホテルオリエンタルエクスプレス大阪心斎橋」を新たに取得した。同法人が大阪および京都に保有するホテル3棟のRevPARは下落しているものの、「大阪の全エリアが悪いわけではない。ホテル運営会社と連携し、効率化を図っていく」という。

「市場環境を受けにくいホテル」を作る

星野リゾート・リートも大阪市内で全436室もの大型ホテル「OMO7 大阪新今宮」の開発を進める。「ホテル周辺一帯をリゾートとみなした魅力発信を行うことで、星のや京都と同様、供給過剰などの市場環境を受けにくいホテルになる」とする。

近年では、訪日外国人に照準を合わせた「アパートメントホテル」の開発も進んでいる。リビングやキッチンを備え、4~8人という多人数で宿泊できるのが特徴で、家族で長期滞在する訪日外国人が好んで利用する。中堅デベロッパーのコスモスイニシアはアパートメントホテル「MIMARU」をこれまで京都に5棟オープンした。アパートメントホテルはビジネスホテルほど競争が激しくなく、今後も大阪や京都での開発を進める方針だ。

アパートメントホテル「MIMARU」の内観(写真:コスモスイニシア)

仕事目的でのビジネスマンと観光目的での訪日外国人、さらに同じ外国人でも国籍や趣向によって、ホテルに求められるサービスは異なるはずだ。本来であれば開発段階でホテルのターゲットや個性を掘り下げるべきところ、旺盛なインバウンド需要はそうした特性を蔑ろにしてでも「建てれば儲かる」状況をもたらした。

だが、ここにきて、そのツケが徐々に現れてきている。大阪市内でホテルを開発中の関西地盤のデベロッパー幹部は、「いつ需給バランスが崩れるか心配だ」と懸念する。今後は、顧客への訴求力を備えたホテル作りが一層求められることになりそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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