過剰供給のツケ、「関西ホテルバブル」に変調 ホテルリートの数値が悪化、安値競争も懸念

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あおりを受けるのは、いわゆるビジネスホテルと呼ばれる宿泊主体型のホテルだ。星野リゾート・リート投資法人は平均客室単価が約9万2000円の「星のや京都」が好調を維持する一方、約1万2000円の「ホテル・アンドルームス大阪本町」は振るわない。

関西のホテルで単価や稼働率に下落の兆しが見て取れたのは昨年からだ。だが、2018年は6月に大阪府北部地震、さらに9月には関西空港を水没させた台風21号という特殊要因があったため、市況の悪化は一過性のものと思われていた。

ところが、今年に入っても業績低迷から脱せず、いよいよホテル業者は焦りをにじませる。「(自然災害に見舞われた昨年と比較しても)稼働が稼げない恐怖感が芽生えた。ほかのホテルの動向を見極めつつ、(価格を)見直さざるをえない」(いちごホテルリートの岩坂英仁・執行役ホテルリート本部長)。

新規に開業するホテルはオープンセールという形で安値を提示するため、負けじと周辺のホテルも価格を下げていく。ホテルの予約が旅行代理店から価格比較サイトへと取って代わられたことも、価格のたたき合いに拍車をかける。

人件費高騰が追い打ちに

宿泊料金という実入りが減る反面、運営にかかる経費は上昇が続く。2018年度の旅館・ホテル客室係の有効求人倍率は大阪府で7.3倍、京都府で7.7倍。各社は客室清掃員などに外国人労働者を投入しているものの、人手確保のための賃金上昇圧力は強まる一方だ。

シーツやタオルなどのクリーニングを行うリネン業務の費用も上昇している。ホテル向けにリネン業務を行う「綿久リネン」の奈良﨑貴弘・営業本部課長は、「(増加するホテルに対して)クリーニングを行う工場のキャパシティーが追いついていない。案件によっては受注を断らざるをえない」と話す。

同社は協力会社に作業を委託したり、ラインを新設したりしているが、増やした受注能力がすぐに埋まる状況だ。リネン業務はもともと単価が安く抑えられていた面もあり、「外注費が大きく値上がりした」と話すホテルもある。

用地費や建築費も高止まりが続く中で、当初見込んだ収益が稼げない誤算も起きている。マリモ地方創生リート投資法人は10月、京都・河原町のホテルの取得を辞退すると発表した。2016年7月の新規上場当初は取得を予定していたものの、不動産価格の上昇によって想定していた収益が期待できなくなったためだという。

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