400兆円ある企業の内部留保を死に金にするな 3000回以上も対話してきた伝説のCFOが叱る

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それに向けた扉を開くカギの1つが、財務戦略の指標であるROEの改善である。

私はこの15年間、短期志向のヘッジファンドやアクティビストと言われる投資家から、超長期志向の年金基金に至るまで、国内外の投資家と年間300件以上、対話を積み重ねてきた。外国人だけでも年間200件として、15年続けると3000回ということになる。

こうして培ったネットワークを生かし、世界の投資家から10年以上アンケートをとっている。その結果を見ると、彼らが日本企業に最低8%のROEを期待していることがわかる。今年のアンケートの回答数は181だったが、彼らの機関投資家としての日本株への投資総額は100兆円を超えている。外国人投資家は、日本の上場企業に対して、ROE8%以上を求めている。

一橋大学大学院の伊藤邦雄教授(当時)が2014年に取りまとめた「伊藤レポート」の議論には私も参画した。このレポートで、中長期的な目標として最低8%を提示したのには、こうした背景もある。

経営者は資本コスト意識が欠如している

8%を目指すべき根拠はまだある。ファイナンス理論に基づくと、投資家が8%の利回りを期待している以上、ROEが8%以上でないと、PBRは1倍を割ってしまうことになる。繰り返しになるが、PBRが1倍以下では、上場している意味がない。

柳良平(やなぎ りょうへい)/1962年生まれ。早稲田大学商学部卒。UBS証券などを経て、2009年エーザイ入社。2015年CFO、2019年6月から現職。著書に『ROE革命の財務戦略』(中央経済社)など

さらに実証データでの裏付けもある。日本企業の10年分の財務データを解析すると、ROEが8%以下の企業であればPBRが1倍前後にとどまっている一方で、8%を超えるとPBRは右肩上がりに伸びていく。このことからもROE8%という数字が重要だということがわかる。

カギのもう1つ。日本企業にとって不都合な真実がある。それは企業の巨額な内部留保。上場企業の内部留保は400兆円を超えるレベルになっており、換金性が高い有価証券を含めると、現金だけで200兆円近くある。この十数年で倍になったと言われている。

 内部留保は本来は株主に帰属する利益。それを株主に返さずに、企業が留保している状態だ。いったん株主に返却してから、エクイティーファイナンスで同額のお金を集めたのと、同義だと考えることができる。ここはよく理解していただきたいと思う。

このように、内部留保を資本市場から調達した資金だと考えると、内部留保にも、平均8%のリターンを株主からは求められているわけだ。

もちろん、流動性やリスクバッファを確保するため、一定の内部留保は必要だろう。ただそれだけでは説明しきれない内部留保は不要。ただ持っているだけではなく、価値を生む投資に使わなければならなない。度を超して内部留保が積み上がっている状況は、企業経営者による資本コスト意識の欠如を表している。

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