フェイスブック上の「教会」で語られる絶望の話

9割の弱音を吞みこむ生活で、1割が爆発する

はなから期待さえしなければ、自分の心を守れる。

はなから期待さえしなければ、日常のあらゆるタスクの中の0.0001%でも担ってもらえたとき「ありがとう」と感謝できる。

だったら、分担しようなんて思わず全部1人でやるほうがいい。心が疲弊するより、体が疲弊するほうがずっとマシだから。

ある日、出産後、退院して間もない友人から「教会」に切実な一報が届いた。

「娘のことは心からかわいいんだよ。かわいくてたまらないんだよ。なのに、自分にまったく余裕がない。些細なことですぐにイライラしたり、泣いたりしてしまう」

そうだよね、わかるよ。今は苦しいときだよね。私も産後すぐはそうだったよ。でもきっと、体が回復すればつらい時期も終わるよ。今はなるべく好きなものだけ食べて、寝られるときに寝よう。

その日、どうしても動けなかった私ともう1人とが彼女とチャットを続け、さらに別の1人はすぐさま山のように料理を作り、それらをタッパーに詰め、子どもとともに彼女の家に駆けつけた。

後日、本人から聞いたその後の話はこうだった。

「あの日、○○ちゃんが肉じゃがとか唐揚げとか、たくさんご飯を作ってきてくれたんだよ。でもこの料理は明日以降に家族で食べてねって。その代わり今日は、今いちばん食べたいものを頼んで一緒に食べようって言ってくれて。

それで、妊娠中からずっと我慢してたお寿司を出前で取って食べたんだよ。産後初めてのお寿司。宅配のさ、高級でもなんでもないお寿司だったんだよ。なのにおいしくて、ありがたくて、涙が出ちゃったよ」

初めて会った10年前は…

彼女たちとは10年前、共通の友人が誘ってくれた食事会で初めて会った。場所は、銀座の高級フランス料理店。当時はまだ私以外全員が独身で(私は離婚協議中の専業主婦)、やればやっただけ報酬と名声の得られる“クリエイティブな”仕事に打ち込んでいた。

だから、1万円くらいのフルコースも、別料金でそれぞれのお料理にあうドリンクが出てくるペアリングコースも、躊躇なくオーダーできた。お寿司だって、目の前で職人が握ってくれる、想像もできないくらい高くておいしいものを、きっと何度となく味わってきたはずだ。

子どもを産む前だったなら、出前のお寿司を食べたって「やっぱりちょっと生臭いね」なんて言ってたかもしれない。けれども産んだら、プラスチックの寿司おけに入って、ラップをかけられて届く出前のお寿司も、お寿司を頼もうと提案してくれる友人も、すべて涙が出るほど得がたいぜいたく品なのだ。

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