牛の角も材料!何とも「風変わりな農法」の中身

バイオダイナミック農法とは何か

雑草が高く生い茂って太陽を遮ったり、過度に栄養を吸収したりするようになった場合にはどうすればいいのか。時々、近くの農家に頼んで羊やヤギをブドウ畑に放して雑草の成長をコントロールする。雑草の種類や勢いなどによって、土壌の健康状態や栄養状態を判断する指標にもなる。ただ、このあたりの説明は有機農業や自然農法と差異はなく、究極の有機農法といわれるバイオダイナミック農法の一端を垣間見たにすぎない。

すると、若き醸造家はさらに話を前に進め始めた。 

「今から説明することに少しの間だけ心を開いて聞いてみてください」。バイオダイナミック農法では有機農法や自然農法をベースとして、太陰暦や占星術に基づいた「農業暦」に沿った収穫や剪定(せんてい)作業を行い、化学肥料や農薬に頼らず、前述の調合剤で宇宙のエネルギーも土壌や植物に取り込むという。

さらに、サビ病などの病害を防ぐためには、スギナを乾燥させて煮出して使ったり、ケイ酸を供給するためにタンポポの花を牛の腹膜に詰めて越冬させたものを使ったりするなど従来の農法と比べて風変わりだ。

従来の農法で生産しているだけ

月と農業の関係は古来知られてきた。ところが、化学肥料や農薬を多用した現代農業の導入によって忘れ去られてしまったことも多いという。新月は、月が太陽側に位置したときに生じ、地球への引力は月の引力に太陽の引力が加わり強くなる。このとき、樹液の流れは下降して根の部分に集まり、満月のときには、葉や花の部分に樹液が集まる。

こうした原理を理解することで、なるべくブドウの木にダメージを与えないよう、新月のときに剪定し、逆に樹勢を抑えて結実を進めたい場合には、満月期に剪定するという考えになる。

「古代の人々や農業を営んできた先祖は、こうした知恵を持っていた。でも、いつしか、そうした知恵は忘れ去られてしまった。私たちは、そうした知恵を復活させているだけです」と、男性は説明する。もっとも、従来の農法で生産するワイナリーと比較すれば、バイオダイナミック農法の収穫量は劣り、手間もかかる。ある年には、ブドウの特定の品種に害虫が大発生してしまい、その品種は収穫量がゼロだったこともあったという。

ただ、パレス・バルタのワイナリーが所有したり、契約したりする畑は、海に近い平野部から、最も高いところで標高は約700メートルに及ぶ。多様な気象や土地の条件を選び、複数の品種でのワインづくりを行うことにより、全体では安定した量のワインを生産できる態勢を整えている。

バイオダイナミック農法の生みの親、シュタイナーとはどんな人物だったのだろうか。20代で早くもゲーテ研究者として名を知られるようになり、神の内奥の本質などの知識獲得を目指す神智学に取り組んだ。物質世界を超えた超感覚的世界について講演を重ね、教育や農業、医学、経済など幅広い分野に影響を与えた。

日本でもシュタイナー教育として幼稚園などで実践されている。シュタイナーは、通常の人間が持つ五感を超えた感覚の重要性も訴えた。

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